【北京=西見由章】中国の習近平国家主席が新型コロナウイルスの感染拡大後に初めて湖北省武漢を視察したのは、感染封じ込めに向けた「人民戦争」の勝利が近いことをアピールし、習指導部の求心力を高める狙いがある。ただ生命の安全を脅かされ移動の自由も厳しく制限された武漢市民を中心に、初動が遅れた当局への反発が広がっており、共産党の宣伝工作は迷走している。 「人民の素晴らしい主席」「総書記、お疲れさまです」。習氏が武漢入りしたニュースに対するネット上のコメントは、判で押したような礼賛しか見当たらず、強力な規制措置をとったことがうかがえる。 武漢市民の投稿も次々と削除された。習氏が視察した居住区の住民とみられるユーザーは、自宅ベランダに上がりこんで警戒する警察官2人の写真とともに「また住民が叫ばないか監視している」と投稿した。 「全部嘘だ!」。武漢で感染対策の指揮をとる孫春蘭副首相が居住区を視察した3月5