「戦争の記憶」をめぐる争いに、どうしたら終止符を打つことができるのか。アメリカにおける日本近現代史研究の第一人者であるグラック教授が、世界から集まったエリート学生たちと徹底討論した。 キャロル・グラック '41年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。専門は日本近現代史・現代国際関係・歴史学と記憶。'96年、アジア学会会長。'06年、旭日中綬章受章。著書に『歴史で考える』(岩波書店)他 敵対的議論を乗り越える 「第二次世界大戦が終結してから75年近くも経つのに、あの戦争をどう見るかは今も熾烈な政治問題となっています。歴史をどう見るかについて、唯一無二の視点というのはあり得ません」 こう語るのは、アメリカの歴史学者であるキャロル・グラック教授(77歳)だ。日本近現代史を専門とし、45年間、米国屈指の名門、コロンビア大学で教鞭を執る。アジアで歴史問題が表面化するたびにメディアや学会で意見を求めら