(岩波書店・1620円) 行政と科学者の日常的協力が大事 意外に、穏やかである。鎖国の日本に単身乗り込んだ、捨て身の宣教師の顔だ。三〇〇年前の切支丹(きりしたん)屋敷跡で出土した遺骨から復元されたもの。骨の形態分析とゲノム解析を駆使した発掘の成果は、二〇一六年末、国立科学博物館(科博)のニュース展示「よみがえる江戸の宣教師(バテレン)」で公開され、好評を博した。 東京都文京区にあった切支丹屋敷は、江戸初期の切支丹狩りで捕らえられた宣教師や信者が収容され、生涯閉じ込められたりした所である。この過酷な弾圧で布教が断念された後になってから日本にやってきたのが、本書の主人公ともいうべきイタリア人宣教師、シドッチだ。無謀な日本入りを強行してすぐ捕まり、切支丹屋敷に死ぬまで幽閉された。その調べに当たったのが、六代将軍家宣に用いられた大碩学(せきがく)・新井白石だった…