(放送コラムニスト:高堀冬彦) 多様なパートナー関係の登場は個人の幸福追求権と自己決定権を描写するため 熱狂的ファンの多いNHK連続テレビ小説『虎に翼』が最終盤を迎えた。 登場人物たちは中年期に入り、その大半にパートナーがいるが、ここで気付く。登場人物たちはドラマにありがちなパートナー選びをしていない。脚本家の吉田恵里香氏(36)の意思に違いない。 主人公で裁判官の佐田寅子(伊藤沙莉)は同じく裁判官の星航一(岡田将生)と第105回から事実婚の状態にある。
(尾中 香尚里:ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員) 3位に沈んで増幅した蓮舫への中傷 7日に投開票が行われた東京都知事選は、事前予想通りに現職の小池百合子氏の3選で幕を閉じた。「現職が負けたことがない」難しい選挙にリスクを取って挑戦した立憲民主党(出馬にあたり離党)の蓮舫前参院議員は、ふたを開ければ小池氏だけでなく、新人の前広島県安芸高田市長、石丸伸二氏にも及ばない3位に沈んでしまった。 結果はともかく、野党第1党として都知事選を「捨て試合」にせず「与野党ガチンコ勝負」の構図を創り上げた蓮舫氏の挑戦を、少なくとも筆者は高く評価したいと思う。 訴えの内容も(聞く人の政治スタンスによって好むと好まざるとの差はあるだろうが)立憲の理念を体現しており、小池氏との選択肢となる役割はおおむね果たしていた。「ひとり街宣」のように、若い世代などが政治へのファーストコンタクトになり得るきっかけも提示した。
2024年度の東京大学合格者に占める女性の割合は、一般選抜で20%を下回った。学校推薦型選抜(推薦入試)を含めると20.6%だが、男女比「8:2」は世界的に見ると極端に少ない。例えばプリンストン、ケンブリッジ、北京大学の女性比率はほぼ半数。女性が少ない大学と認識されてきたソウル大学でも、女性比率は4割程度だ。なぜ東大だけが変われないのか。この問いは、なぜ日本が変われないかに直結する。 こうした状況に危機感を抱く、現役の東大副学長・矢口祐人教授が『なぜ東大は男だらけなのか』(集英社新書)を上梓した。矢口教授は本書で、日本社会で連綿と続く男性中心の価値体系の歴史をひもといた上で、東大が変わるための具体策を提案する。「男女比率を改善しないと日本の大学と社会は変わらない」と説く矢口教授に話を聞いた。 「東大に入ると結婚できなくなる」といまだに言われる令和日本 ──大学への進学比率は男女ほぼ同じなの
東大含む(いわゆる)旧帝大合格者のうち、東京圏出身者の割合が近年顕著に増えている――。3日付の毎日新聞朝刊が、長年『サンデー毎日』が収集してきたデータをもとに、こんな分析結果を報じた。本人が選択しえない「生まれ」による教育格差は、いまどんな状況にあるのか。出身地域の多様性が下がったキャンパスは、学生たちにどんな影響を与えるのか。『教育格差』(ちくま新書)の著書がある龍谷大学社会学部の松岡亮二・准教授が、3回にわたり、毎日新聞が報じたデータを独自分析した上で詳しく解説する。 #3/全3回 <前編>東大合格、増える東京圏出身者 北大・東北大では地元合格を押し下げ…進む「地域格差」は社会に何をもたらすか <中編>親非大卒枠、地方出身枠、女子枠…大学入試のアファーマティブ・アクション、拡充でも公平性達成は程遠いワケ ◎毎日新聞特集ページ「受験格差」 (松岡 亮二:龍谷大学社会学部 准教授) 都道府
教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、男子校で広がり始めた性教育とジェンダー教育の現場に迫る連載「ルポ・男子校の性教育」。第6回は駒場東邦中学校・高等学校を訪ねた。今回は「性教育」の特別授業ではなく、普段の国語の授業。えげつない描写も含まれる小説を題材に、中3男子のジェンダーバイアスに揺さぶりをかける。 駒場東邦中学校・高等学校(以下、駒東)は、2023年には東大に72人の合格者を出すなど、東大合格者ランキングトップ10の常連。過去には昭和女子大の学生たちとジェンダーについて学ぶ機会を設けていたり、外部講師による性教育講義を定期的に行っていたりと、男子校の“アキレス腱”を補う教育に力を入れてきた。その姿勢は普段の授業にも染み込んでいる。中3の現代文の授業を見学した。 (おおたとしまさ:教育ジャーナリスト) 「たとえばアダルトコンテンツを見てる男の子でも、好きな女の子にはそういうことしてほ
私たちが日常生活を営む上で不可欠な仕事に従事する人たち=エッセンシャルワーカーが、コロナ禍で大きな注目を集めた。 その多くは報酬が低く、劣悪な労働環境にある。一方、コンサルティングなど「特になくてもかまわないが報酬の高い」仕事もある。いわゆる「ブルシット・ジョブ=クソどうでもいい仕事」だ。 この不均衡を是正するにはどうしたらよいのか。筑波大学人文社会系教授の田中洋子氏が上梓した『エッセンシャルワーカー 社会に不可欠な仕事なのに、なぜ安く使われるのか』(旬報社)から一部抜粋する。 >>後編:ドイツのマクドナルドには正規/非正規雇用の区別なし、全員が「正社員」待遇 これまでもスーパーマーケットの従業員やトラックの運転手は、毎日当たり前のように社会を支えてきたが、その仕事の重要性が社会に明確に意識されることはほとんどなかった。2020年の世界的な新型コロナウイルスの感染拡大への緊急対策として社会
安倍元首相の死去後、噴き出した安倍派の政治資金パーティーを巡る問題。不記載となった資金の使途や業界団体が派閥のパーティー券を買う意図など、さまざまな論点が噴出している。 過去の例を見ると、仮に問題となっている議員が不起訴処分に終わっても、検察審査会での審議を経て略式起訴、公民権停止にいたる可能性は高い。 解散総選挙を唱える向きもあるが、自民党議員の何人が公民権停止になるか分からない現状、仮に総選挙があるとしても、少なくとも辞任した議員の衆参補選がある4月28日以降になるのではないか。 (山本一郎:財団法人情報法制研究所 事務局次長・上席研究員) 11月下旬以降、自民党の最大派閥、安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題が拡大しており、安倍派の党四役や閣僚などの総辞任まで取り沙汰されるようになりました。 派閥でのパーティーを開くにあたって所属議員さんに割り当てられたパーティー券の売り上げノルマ
深まる秋におしゃれをして芝居にいくのは心躍るひととき。でも、劇場のマナーや独特の雰囲気に、つい足踏みしてしまう人も。通に聞いた、観劇のコツや歌舞伎の最高峰・歌舞伎座をたのしみ尽くすポイントをご紹介します。 文=新田由紀子 写真=PIXTA ちょっと恐ろしい!?服装チェック 服装に決まりはないが、気をつける必要はあると語るのは10代から歌舞伎を観続けている松田正美さん(50代女性・仮名)。 「歌舞伎は、ハレの場。現代演劇とは違う祝祭的な要素があります。特に歌舞伎座は、しっかりおしゃれをしてくる人たちのいる劇場。みんながドレスアップしてきているレストランに、カジュアルなセーターで行ったら白い目で見られるようでなんだか楽しめないというのと同じですね」という。 夏目漱石の小説などに登場するように、歌舞伎座は昔から社交場でもあった。今でも、たくさんの有名人が客席につめかけている。 「この前は女優の浅
NHK朝の連続テレビ小説『らんまん』の主人公・槙野万太郎は、世界的な植物学者・牧野富太郎博士をモデルにしているのは、周知のとおり。槙野万太郎は、幼少期を演じた森優理斗、少年期を演じた小林優仁、そして、青年期を演じる神木隆之介と、それぞれの俳優の好演もあり、聡く優しく、純粋に植物を愛する、大変に魅力的な青年であるが、万太郎のモデルである牧野富太郎とはどんな人物なのでしょうか。『牧野富太郎・植物を友として生きる』(PHP文庫)を上梓した鷹橋忍さんが、牧野富太郎の生涯を語ります。 文=鷹橋 忍 幼くして父と母を失う 牧野富太郎は、文久2年4月24日(1862年5月22日)、幕末動乱の時代に誕生した。 富太郎の生家は、土佐国高岡郡佐川村(高知県高岡郡佐川町)にあった「岸屋」という名の裕福な商家である(ドラマでは酒蔵「峰屋」)。 富太郎いわく、牧野家は酒造業と雑貨店を営んでおり、佐川ではかなりの旧家
2021年に刊行されるやいなや、NHKをはじめとするメディアや著名識者が絶賛、ベストセラーとなり、サントリー学芸賞を受賞した『土偶を読む』(竹倉史人著、晶文社)。土偶は人ではなく、植物をモチーフにしている、という新説を提示したこの本は、土偶解釈の大胆さやユニークさとともに、専門家や専門知に果敢に挑戦したことが高い評価につながった。考古学の専門家ではない竹倉氏が、考古学の権威と闘うというストーリーが、識者や読者の共感を得たのだ。 この本へのいわば“アンサー本”が、今年、専門家の立場から出た。縄文時代をテーマにした雑誌『縄文ZINE』の編集人・望月昭秀氏と9人の考古学研究者らによる『土偶を読むを読む』(文学通信)である。望月氏らは、竹倉説が「皆目見当違い」であることを最新の研究に基づいて論証したうえで、自由な発想は歓迎すべきものだが、専門知には専門知の役割があることを示す。 視野が狭く難しいと
本書は『土偶を読む』を丁寧に検証しながら、竹倉氏の自由な「発想」は批判されるものではないが、「検証」があまりに杜撰で、学問的には説として到底認められるようなものではないと結論づける。さらに、竹倉氏の本が、世に受け入れられていった経緯についても検証を重ねていく。 専門知識はあれど一般社会と乖離しがちな学術の世界。専門知識はなくとも影響力を持つ「識者」という存在。わかりやすい物語を欲するメディアと読者……。これらの交わり方によって、事実はときに大きく歪む。〈『土偶を読む』ブーム〉を超えて、我々は「複雑な知」とどう向き合うべきなのか──。望月氏に話を聞いた。 発想は批判されるものではないが、検証が杜撰だった ──『土偶を読む』刊行直後から、望月さんは、竹倉さんの説に疑義を呈していらっしゃいました。従来、土偶は、人間、主に女性をかたどったものだとされてきました。しかし『土偶を読む』で竹倉さんは、土
大阪・関西万博のパビリオン建設が大幅に遅れている。 労務費や物価の高騰など遅れの要因は一つではないが、根底にあるのは万博協会のマネジメント能力の欠如。 日本はオペレーションの高さを世界に誇ってきたが、その部分も劣化し始めているのかもしれない。 (植村 公一:インデックス代表取締役社長) 2025年国際博覧会(大阪・関西万博)のパビリオン建設が遅れているという報道が連日のようになされています。 私が代表を務めるインデックスは建設・インフラプロジェクトのプロジェクトマネジメントが本業であり、いくつかのパビリオン建設のプロジェクトマネジメントに実際に関わっているため、着工前に必要な建築基準法上の仮設建設物許可申請が進んでいないという話は少し前から聞いていました。 それでも、万博開催まで2年を切っている今、許可申請を出した国内パビリオンが全体の約3割に過ぎず、参加国・地域の海外館に至っては申請数が
「何のことだろう?」と気になるタイトルで静岡新聞が始めた「サクラエビ異変」が4年半の連載を閉じた。駿河湾へ注ぐ富士川流域に暮らす人々を巻き込み、行動に駆り立て、記者はさらに調査を深めて、また一歩進む。「課題解決型報道」としてジャーナリズムの世界でも注目された。その連載を担当した坂本昌信記者(現在、静岡新聞清水支局長)に話を聞いた。 暴かれた国策民営会社、日本軽金属株式会社の悪事 ――2018年春の漁獲減少を契機に、富士川の上流から下流にかけて起きている問題を報じていきました。第1章は「母なる富士川」として上流で問題になっている堆砂問題から始まりましたね。 「静岡新聞では編集局全員でキャンペーン連載のテーマを話し合って決めるのですが、その年はサクラエビの不漁に決まりました。 サクラエビ漁は1894年に富士川河口で、アジの船引き網漁で偶然かかって始まったとされます。現在では静岡県民のソウルフー
4月28日、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する政府の有識者会議が行われた。昨年12月から始まった会議は今回で7回目を数える。5月11日にここまでの議論を踏まえた中間報告書が法務省に提出された。 これに対して異議を唱えるのがNPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)だ。翌日12日、移住連は「『廃止』をまやかしに終わらせるのではなく、奴隷労働構造の根絶を」との声明を発表した。 政府の有識者会議で語られている内容には、どんなまやかしがあるのか。移住連の共同代表理事、鳥井一平氏に話を聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト) (全2回の#2) ◎【前編】「現代の“奴隷労働”とされる技能実習制度、政府の議論はどこが間違っているのか」 ※技能実習:開発途上国の人が対象。現場での実習を通して日本の技術を学んでもらい、祖国で活用してもらうことを目的としている。 ※特定技能:人材
4月28日、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する政府の有識者会議が行われた。昨年12月から始まった会議は今回で7回目を数える。5月11日にここまでの議論を踏まえた中間報告書が法務省に提出された。 これに対して異議を唱えるのがNPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)だ。翌日12日、移住連は「『廃止』をまやかしに終わらせるのではなく、奴隷労働構造の根絶を」との声明を発表した。 政府の有識者会議で語られている内容には、どんなまやかしがあるのか。移住連の共同代表理事、鳥井一平氏に話を聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト) (全2回の#1) ◎【後編】「現代の“奴隷労働”とされる技能実習制度に潜むマッチング機能という利権」(6月5日公開予定) ※技能実習:開発途上国の人が対象。現場での実習を通して日本の技術を学んでもらい、祖国で活用してもらうことを目的としている。 ※
教員は4分の3に削減される一方で、3人だった副学長は8人に、5人だった副理事を8人に増員された。そして役職者に就くのは文部科学省からの出向者やOB——。福岡教育大学で実際に起きた“異変”だ。ここ10年ほど、日本全国の大学で、耳を疑うような事件が頻発している。2000年代以降に行われた国立大学の法人化や国の法改正により、政財界や大学経営者の権力が強化され、教職員や学生の立場は弱くなり続けている。その一端をレポートする。 (*)本稿は『ルポ 大学崩壊』(田中圭太郎、ちくま新書)の一部を抜粋・再編集したものです。 教員を大幅に減らして、役職者を増やす 「文科省から出向してきている役職者も含め、大学の規模から考えると、他大学よりも多い役職者数になっています。その一方で、法人化前と比べると、大学の常勤教員の数は約3割削減されました。採用が抑制されていることで、教員は多くの業務に疲弊しています」 こう
(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎) 安倍晋三元首相の襲撃事件をきっかけに、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政治家の関係が取り沙汰されるようになった。 ここへきて自民党を中心に統一教会との関係を報道で指摘されるばかりでなく、率先してカミングアウトする国会議員まで出てきた。 ところが、統一教会との関係を認めたはいいが、その国会議員たちに悪びれる様子は一切無い。むしろ淡々としていて、まるで「そのどこがいけないのか」とばかりに開き直っているようだ。少なくとも戒めの言葉は聞いたことがない。 そこでサルにもわかるように、事件から3週間が経つ間に、私がこの事件と統一教会に関する問題について書き綴ってきた内容から、問題がどこにあるのか、説いてみたい。 宗教法人である以前に反社会的団体 まず、統一教会の位置づけだ。統一教会は日本の宗教法人法に基づく、日本の宗教法人だ。 ここでわけのわからない輩は、
2012年の総選挙で安倍晋三氏率いる自民党が大勝を収めて以来、自公連立政権がすべての国政選挙で勝ち続けている。政治学者の白井聡氏は「この体制の統治パフォーマンスは決して褒められたものではない、むしろ統治の崩壊とも言うべきひどい水準にあるのに、なぜ退場させられないのか?」と疑問を呈し、その最大の理由は国民の「無知」のせいではないかと指摘する。日本の有権者は、なぜ自民党に票を入れ続けるのだろうか。(JBpress) (*)本稿は『長期腐敗体制』(白井聡著、角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。 維持されてきた「2012年体制」 今から10年前の2012年の年末に衆議院解散選挙があり、安倍晋三氏率いる自民党が大勝を収め、野田佳彦氏を首班としていた与党民主党は下野しました。2009年の総選挙によって成立した民主党政権は、ここに終わりを迎えました。 周知のように、それ以降、自公連立政権がすべて
(山本一郎:情報法制研究所 事務局次長・上席研究員) 奈良での選挙応援演説中に凶弾に斃れた安倍晋三さんの事件の背景に、銃撃した容疑者の家庭環境があることが明らかになってきています。一家離散の原因となった宗教団体・旧統一教会(現・家庭連合)への過剰な宗教献金、いわゆる「宗教二世」問題です。 一国の元総理が白昼堂々暗殺されるという凄惨で衝撃的な事件があったことで、特定の宗教や信仰そのものが否定されることは望ましくありません。容疑者にいかなる背景があったとしても、その出自、地域、人種、勤務先などの属性で一概に非難をすることは危険です。仮に今回のバックグラウンドに宗教問題があったとしても、それと認めて家庭連合(統一教会)を指弾することは、テロを起こし、安倍さんを銃撃した容疑者の願望を達成することに他ならないからです。 同時に、我が国には政教分離の原則があります。この政教分離原則とは、日本国憲法20
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く