ここ10年ぐらいの出版界において、大きな問題は「ブックオフ」(新古本流通)と「電子書籍」だろう。特にブックオフの問題は、出版と出版流通ビジネスの根幹を否定する深刻な問題である。 ブックオフは出版業界にとって異物である。本の流通を扱いながら、既存の出版業界にはなんの利益も与えずに、むしろ売り上げを奪う吸血虫のような存在である。繁栄するこの異物は何者なのであろうか。時代の変革期には往々にして、過去の体制を崩す異物に未来の体制を築くヒントが秘められていることがある。まずその本質を見極めなければならない。 「本は捨てられない」から生まれたビジネス そもそも新刊が古本として流通しはじめたのは、80年代バブルの末期頃、ホームレスたちが始めた「雑誌の最新号を集めて駅で売る」というところからである。それまでも、電車の棚に置かれた雑誌や駅ホームのゴミ箱に置かれていた雑誌を拾うというようなことはありがちだった