* セクシュアリティにおける多重見当識 精神医学用語に「二重見当識」というものがあります。これは統合失調症の患者などにみられるとされるもので、例えば「自分は東京都知事だ、資産数十兆円だ」といった妄想を語りながら、看護スタッフの指示で病棟の掃除を手伝ったりしているような事態を指しています。自分の立場を理解することを「見当識」といいますが、いかに重症の妄想型分裂病患者といえども、妄想の立場と患者の立場を区別できることは案外多く、こういう患者は「二重見当識」を持つといわれます。 この点、ひきこもり臨床で知られる精神科医の斎藤環氏は日本におけるオタク系文化を論じた古典的名著『戦闘美少女の精神分析』(2000)において、こうした「二重見当識」に示唆された「多重見当識」という概念からオタク(同書で斎藤氏は「おたく」とひらがなで書きます)の心理あるいは行動を論じています。 斎藤氏によれば「コアなおたく」