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  • 「農奴解放政策」が音楽にもたらしたもの。ハイドン:交響曲 第73番 ニ長調《狩り》 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ルーベンス『狩りをするディアナとニンフたち』 農民と農奴の違いとは 新年あけましておめでとうございます。 年もブログをよろしくお願いいたします。 さて、昨年に引き続き、モーツァルトに保護を与えたことで有名な、皇帝ヨーゼフ2世の〝上からの改革〟とその影響をみていきます。 「宗教の寛容」と並んで名高いのが、「農奴の解放」です。 もうすぐ19世紀という時代なのに、中世の農奴制がまだ残っていたの?と驚きますが、農村というのは都会に比べて、どの国でもどの時代でも保守的で、なかなか変化しにくいのです。 農業の生産活動が、商工業などに比べて暦に縛られ、毎年毎年のルーティンがきっちり決まっているからなのかもしれません。 これを下手に崩そうものなら、たちまち収穫が得られなくなるのではないか、という怖さがあります。 日でも、地主と小作人の従属関係は、戦後の農地改革まで続いていたという見方もあります。 中

    「農奴解放政策」が音楽にもたらしたもの。ハイドン:交響曲 第73番 ニ長調《狩り》 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2023/01/02
    明けましておめでとうございます旧年中は大変お世話になり有難うございました、本年も昨年同様宜しくお願い致します
  • ユーモア?クレイジー?やんちゃすぎるシンフォニー。ハイドン『交響曲 第46番 ロ長調』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    作曲する若きハイドン 宮廷楽長のお仕事 ハイドンは、エステルハージ侯爵家の宮廷楽団副楽長に就任した翌年、1762年に代替わりした新しい君主、エステルハージ・ニコラウス・ヨーゼフ侯爵(1714-1790)の元で、格的な活動を仕切り直して始めました。 ハイドンの仕事は大きく分けて3つです。 1つめは、指揮者として楽団の演奏をリードすること。 2つめは、楽団で演奏する音楽を作曲すること。 3つめは、管理職として、楽団員の人事労務、楽譜や楽器などの備品を管理すること。 現代の音楽家はもちろんのこと、当時でもここまでの仕事と責任を任されている人はいませんでした。 今、私たちがハイドンの仕事の恩恵にあずかっているのは、2つめの作曲の成果ですが、彼の業務の中では三分の一に過ぎなかったわけです。 演奏中のハイドンは恍惚として忘我の状態にあり、その顔は微笑に輝き、きわめて表情豊かだったということです。*1

    ユーモア?クレイジー?やんちゃすぎるシンフォニー。ハイドン『交響曲 第46番 ロ長調』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2022/06/21
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  • 妻恋し、待ち焦がれた帰省のとき。ハイドン『交響曲 第45番〝告別〟』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    エステルハーザ宮殿 帰りたい、帰れない いよいよ年も押し迫り、帰省ラッシュが始まりました。 みな、さまざまな思いを胸に、実家に、あるいは離れた家族のもとに帰っていきます。 クラシックで帰省といえば、思い浮かぶ曲があります。 それは、ハイドンの〝告別シンフォニー〟です。 この曲の成り立ちには有名なエピソードがあります。 ハイドンが、困窮した下積み時代の末に、ハンガリーの大貴族、エステルハージ家の楽長になったことは前述しました。 www.classic-suganne.com www.classic-suganne.com 音楽好きの主君ニコラウス侯爵から絶対の信頼を受け、30年にわたって、その才能を思う存分発揮することができました。 ハンガリー王位は当時はハプスブルク家のものになっており、皇帝が兼ねていましたが、実質的なハンガリー王はエステルハージ侯だといってもいいかもしれません。 〝壮大侯

    妻恋し、待ち焦がれた帰省のとき。ハイドン『交響曲 第45番〝告別〟』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2022/06/20
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  • 新上司とのしがらみを超えて。ハイドン『交響曲 第43番 変ホ長調《マーキュリー》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    エステルハージ侯爵ニコラウス1世 新しいご主人さまも名君 ハイドンがエステルハージ侯爵家の宮廷楽団副楽長として雇用され、さっそくに〝チームハイドン〟ともいうべき新オーケストラを編成し、宮廷の音楽活動の総監督として八面六臂の活躍を始めて1年足らず。 彼を抜擢したエステルハージ・パウル・アントン侯爵(1711-1762)が急逝してしまいます。 もっと長生きしてハイドンの音楽を堪能してもらいたかったのに、惜しいことです。 代わりに、弟のエステルハージ・ニコラウス・ヨーゼフ侯爵(1714-1790)が跡を継ぎましたが、これが、前代を上回る英主でした。 ニコラウス1世とも呼ばれます。 〝島津にバカ殿なし〟といいますが、エステルハージ家も代々名君揃いなのです。 ニコラウス1世は次男として生まれましたので、最初から跡継ぎとされていたわけではありませんでした。 そのため、オランダのライデン大学やウィーン大

    新上司とのしがらみを超えて。ハイドン『交響曲 第43番 変ホ長調《マーキュリー》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2022/06/13
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  • 偉大なる人生の夕暮れ。ハイドン『交響曲 第8番 ト長調《晩》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ニコラ・プッサン『冬または大洪水(連作「四季」)』 夕方に襲ってくる嵐 ハイドンが1761年、ハンガリーの大貴族、エステルハージ侯爵家の宮廷楽団副楽長として雇用され、最初のデビュー作として作曲した、3曲セットのシンフォニー、『朝』『昼』『晩』。 今回は最後の『晩』を聴きます。 この曲で、具体的に『晩』の事象を表しているのは、第4楽章の『ラ・テンペスタ(嵐)』だけです。 夕方に襲ってきた嵐を表現した標題音楽になっています。 嵐は、ハイドンの後年のオラトリオ『四季』の『夏』でも取り上げられていますが、そこでも襲来したのは夕方です。 そこで描かれているのは、嵐がひとしきり暴れたあと、過ぎ去って静寂が戻ると、天にはまだ夕日が輝き、露に濡れた万物が光るなか、教会の晩鐘が鳴り響く…という素晴らしい情景です。 ベートーヴェンの田園シンフォニーでも、歌詞こそありませんが、同様のドラマが描かれています。 w

    偉大なる人生の夕暮れ。ハイドン『交響曲 第8番 ト長調《晩》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2022/06/07
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  • けだるい昼下がりのメロドラマ。ハイドン『交響曲 第7番 ハ長調《昼》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    三部作が初演された、ウィーン・ヴァルナー通りのエステルハージ侯爵邸 ハイドンが題名をつけた、唯一のシンフォニー ハイドンが1761年、ハンガリーの大貴族、エステルハージ侯爵家の宮廷楽団副楽長として雇用され、最初のデビュー作として作曲した、3曲セットのシンフォニー、『朝』『昼』『晩』。 今回は2曲目の『昼』を聴きます。 3曲のうち、この曲だけ自筆譜が遺されており、そこに1761年の日付があったため、年代の特定ができたのです。 ちなみに、ハイドンのシンフォニーにはいくつも親しみやすい愛称がついていますが、それは題名ではなく、また作曲者の意図を反映したものでさえありません。 ハイドンが題名を楽譜に記したのは、104曲のうち、実にこの曲だけなのです。 曲の中身も、各楽器すべてにそれぞれソロの見せ場が与えらえれ、メンバーを入れ替えた新生楽団の団員紹介になっていますので、まさにデビュー曲であることが裏

    けだるい昼下がりのメロドラマ。ハイドン『交響曲 第7番 ハ長調《昼》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2022/05/30
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  • 壮絶な葛藤、ハイリゲンシュタットの遺書。ベートーヴェン:オラトリオ『オリーブ山上のキリスト』作品85(前編) - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    エル・グレコ『ゲッセマネの祈り』 ハイリゲンシュタットの苦悩 ベートーヴェンは、耳の病の療養のため、親友ヴェーゲラーに悩みを打ち明けた手紙を書いた翌年、1802年5月頃に、ウィーン郊外のハイリゲンシュタットに移ります。 ハイリゲンシュタットは、これまで時々療養のため訪れていたウンターデープリンクよりさらに北に位置します。 第2シンフォニーやピアノコンチェルト第3番を世に問おうとしたコンサートが中止となったこともあり、それらの作曲を中断し、格的に療養に専念するためでした。 これまで、シンフォニーやピアノコンチェルトはハイリゲンシュタットで書かれたものと考えられてきましたが、スケッチの研究からそれは否定されていて、前回、前々回取り上げた、新しいスタイルの変奏曲の作曲や、新曲の楽想を練るくらいで、あまり無理はしなかったようです。 都会を離れ、煩わしい人付き合いから逃れ、田舎暮らしで英気を養った

    壮絶な葛藤、ハイリゲンシュタットの遺書。ベートーヴェン:オラトリオ『オリーブ山上のキリスト』作品85(前編) - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/09/25
    有難うございます何時も拝見させていただいております、尚、 皆様には感謝申し上げます
  • 宵の明星が優しく窓辺を打つ音。『ピアノソナタ 第18番 変ホ長調 作品31-3《狩》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ベートーヴェンの挑戦は続く ベートーヴェンの『3つのピアノソナタ 作品31』、今回は最後となる3曲目、第18番 変ホ長調を聴きます。 3曲セットのうち、この曲だけ4楽章となっています。 以前聴いた『3つのピアノソナタ 作品10』も、最後の第7番だけ4楽章になっていますが、このことにどこまで意味があるのかは分かりません。 このソナタもかなり変わっているのですが、〝新しい道〟を突き進むベートーヴェンにとって、〝普通の作品〟というのは、もはや無いのが普通、ということでしょう。 4楽章もあるのに、ゆっくりとした緩徐楽章がありません。 そんなのは後年のシンフォニー 第8番まで見られないです。 第2楽章は「スケルツォ」と題され、第3楽章が「メヌエット」になっています。 ベートーヴェンは、ハイドンやモーツァルトが作っていたメヌエットをどんどんスケルツォに置き換えていったのですが、それが並んでいる、という

    宵の明星が優しく窓辺を打つ音。『ピアノソナタ 第18番 変ホ長調 作品31-3《狩》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/08/11
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  • オリンピックをテーマにしたバロック・オペラ。ヴィヴァルディ:オペラ『オリンピアーデ』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    『オリンピアーデ』台の表紙(1734年) 東京オリンピック2020開幕! 賛否の渦巻くなか、東京オリンピックが1年延期ののちに開幕しました。 日にとっては2回目となる歴史的なイベントですが、ここまで波乱の連続だったのも、近代オリンピック史に永く刻まれることでしょう。 物議はこれからも続くでしょうが、開かれた以上は無事、成功裡に終わることを祈ってやみません。 また、コロナ禍の中、わざわざ来日してくれた世界の方々に、行動不自由な中ではありますが、日の良さを少しでも味わっていただきたいものです。 東日大震災のときには、被災した人々が譲り合い、助け合っていた姿が世界中の人々に感銘を与えました。 そしてコロナ禍。 日での感染者数は、諸外国の感染者、犠牲者数と比べると桁違いに少なく抑えられています。 生物学的な理由、ファクターXもあるかもしれませんが、日人の生活習慣における衛生意識の高さが

    オリンピックをテーマにしたバロック・オペラ。ヴィヴァルディ:オペラ『オリンピアーデ』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/07/26
    有難うございます何時も拝見させて頂いております、なお皆様には感謝申し上げます
  • 〝新しい道〟の第1歩。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第16番 ト長調 作品31-1』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ベートーヴェンの〝新しい道〟とは 前回の〝田園〟に続き、この時期のベートーヴェンは、間髪を入れずピアノソナタを次々に作曲、出版していきます。 次の作品は、久々のオーソドックスな3曲セットとなった作品31。 第16番 ト長調、第17番 ニ短調《テンペスト》、第18番 変ホ長調の3曲です。 しかし、セット販売されたのは作曲から2年後で、はじめは最初の2曲がセット、第18番は《悲愴》とカップリングされて出版されました。 ただ、当時マネージャー役をしていた弟カールが、ライプツィヒの出版社ブライトコップフ&ヘルテル社あてに〝3つのソナタ〟として売り込んだ1802年4月22日付の手紙が残っているので、ベートーヴェンがセットを意識して作曲した可能性は高いです。 また、この3曲は力作にも関わらず、誰にも献呈されていないのが謎とされています。 第15番までは〝実験的ソナタ期〟で、ソナタの形をあえてぶち壊して

    〝新しい道〟の第1歩。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第16番 ト長調 作品31-1』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/07/22
  • キューピッドたちよ、愛を求めて異国へ飛んでいけ!ラモー:オペラ=バレ『優雅なインドの国々』①「プロローグ」~ベルばら音楽(29) - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ネクタル(神酒)をもつ青春と若さの神ヘベ フランスならではの『オペラ=バレ』 ジャン=フィリップ・ラモー(1682-1764)は、1735年に初のオペラ『イポリートとアリシー』を上演した後、次々とオペラを生み出していきます。 しかし、こだわり抜いた『イポリートとアリシー』に聴衆がついていけなかったので、一般ウケを意識し、だんだんと親しみやすく、楽しい作風になっていきます。 ラモーの人間ドラマとしてのオペラは、『イポリートとアリシー』で最初から頂点を極め、その後は娯楽性を強めていくのです。 モーツァルトが、若い頃は聴衆ウケを意識していたのに、年齢とともに音楽が深みを増して人々がついていけなくなったのとは、逆の流れといえます。 『イポリートとアリシー』はジャンルとしてはリュリが創始した「抒情悲劇(トラジェディ・リリック)」ですが、次作『優雅なインドの国々 Les Indes galantes』

    キューピッドたちよ、愛を求めて異国へ飛んでいけ!ラモー:オペラ=バレ『優雅なインドの国々』①「プロローグ」~ベルばら音楽(29) - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/07/15
  • 癒される田舎の情景。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第15番 ニ長調 作品28《田園》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    フランソワ・ブーシェ『夏のパストラル』 もうひとつの〝田園〟 ベートーヴェンのピアノソナタをさらに聴いていきます。 前回の〝月光ソナタ〟の次の作品は、第15番 ニ長調 作品28〝田園〟です。 ベートーヴェンの〝田園〟といえば、シンフォニー第6番ですが、ピアノソナタにもあるのです。 1808年に作られたシンフォニーの方は作曲者によって『シンフォニア・パストラーレ(田園交響曲)』『田舎の生活の思い出』と題されていますが、この1801年に作曲されたこのソナタには、ベートーヴェンは何も標題はつけていません。 例によってベートーヴェンの死後、1838年にハンブルクの出版社クランツが楽譜に『ソナタ・パストラーレ(田園ソナタ)』として発売したことによります。 ただし、この題には、〝月光〟と違って、作曲者の意図が全く反映されていない、というわけではありません。 ベートーヴェンが田園(パストラル)をテーマに

    癒される田舎の情景。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第15番 ニ長調 作品28《田園》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/07/12
  • 数々の伝説に彩られた、ムーンライトソナタ。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第14番(幻想曲風ソナタ)嬰ハ短調 作品27-2《月光》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    テーマは何か? ベートーヴェンの2曲セット『2つの幻想曲風ソナタ 作品27』の2曲目が、有名な〝月光ソナタ〟〝ムーンライトソナタ〟です。 ピアノソナタといえばまずこの曲の名が思い浮かぶ、ソナタの王者です。 まさに降り注ぐ月の光のように幽玄な第1楽章。 短いけれど憧れで胸がいっぱいになる第2楽章。 地獄から湧き上がるかのような激しい情念に圧倒される第3楽章。 この曲の与えるインパクトの強烈さから、ベートーヴェンがなぜこの曲を書いたのか、彼はこの曲にどんな思いを込めたのか、作曲当時から作曲者の死後に至るまで、様々な説、解釈が唱えられてきました。 いわく、叶わない恋へのやるせない思いをぶつけた。 いわく、盲目の少女に月光の美しさを伝えるために捧げた。 いずれもロマンティックなエピソードで、この曲を聴く人は、これらの〝伝説〟に思いを馳せることになります。 そうすると、この謎めいた曲の解釈に答えを与

    数々の伝説に彩られた、ムーンライトソナタ。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第14番(幻想曲風ソナタ)嬰ハ短調 作品27-2《月光》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/07/05
  • 〝ファンタジー〟の意味するものとは。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第13番(幻想曲風ソナタ)変ホ長調 作品27-1』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    矛盾した?タイトル 前回に続き、ベートーヴェンの〝実験期〟のピアノソナタを聴いていきます。 1800年から1802年にかけて作られた2曲のソナタ「作品27」は、特に『幻想曲風ソナタ Sonata quasi una Fantasia』と名付けられ、1802年に出版されます。 幻想曲(ファンタジア)は、モーツァルトも何曲か書いていますが、曲の内容が幻想的、ファンタジック、という意味ではありません。 形式にとらわれず、作曲者の自由な発想、想像力のおもむくままに作られた曲、というニュアンスのジャンルです。 若きベートーヴェンがウィーンにピアニストとしてデビューして喝采を浴びたのは、即興演奏でした。 これは「ファンタジーレン」と称されて、コンサートの余興的な目玉になっていましたが、この精神でピアノソナタを構築した、というのが今回の実験なのです。 ソナタというのは、ハイドンが整え、モーツァルトが深め

    〝ファンタジー〟の意味するものとは。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第13番(幻想曲風ソナタ)変ホ長調 作品27-1』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/06/28
  • ある英雄の死を悼んで。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第12番 変イ長調 作品26《葬送行進曲付き》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    アキレス腱を射られて死ぬ英雄アキレス(アキレウス) 〝卒業〟後も先輩を意識? 前回の変ロ長調のピアノソナタ 第11番で、初期創作の総決算を行ったベートーヴェン。 これ以降は〝実験期〟と言われる時期で、これまでの枠組みにとらわれず、新しい道を探っていきます。 ここからは1曲、1曲が独創的で、ベートーヴェンならではの強烈な個性が香り立つ世界が繰り広げられていきます。 と言いながら、次のピアノソナタ 第12番は、またモーツァルトを意識した作品なのです。 ベートーヴェンが元ネタにしたのは、有名な「トルコ行進曲」のついた、ピアノソナタ 第11番 イ長調 K.331。 ソナタなのに、ソナタ楽章がひとつもない、モーツァルトの中でも異色の作品です。 ベートーヴェンは、この矛盾したコンセプトを自分の作品でもやってみよう、と思いついたのです。 つまり、モーツァルトの〝実験〟を自分なりに、という発想なのです。

    ある英雄の死を悼んで。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第12番 変イ長調 作品26《葬送行進曲付き》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/06/21
  • ハイドン、モーツァルトからの卒業制作。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第11番 変ロ長調 作品22』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ピアノソナタ 第11番の初版表紙 自ら〝第1級の作品〟と誇った曲 引き続きベートーヴェンのピアノソナタを聴いていきます。 前回の第9番と第10番は、室内的な、優しい雰囲気でしたが、次の第11番は実に華やかで、派手な効果を狙っています。 コンサート向きな作品といえます。 この曲は1800年に完成し、出版は1802年でした。 出版は、曲を発表してから、しばらくあちこちで弾いて、ある程度評判になってから行われることも多かったのです。 ベートーヴェンは特にこの作品に自信をもっていました。 以前も触れましたが、ベートーヴェンが出版社に宛てて書いた有名な売り込みの手紙をもう一度取り上げます。 さて、われわれの件ですが、お求めに次のようにお応えしたく存じます。ただいま提供できますのは次の作品です。七重奏曲(これについてはもうすでに申し上げてあります。広く普及させ、利益も大きく上がるようピアノ編曲もできま

    ハイドン、モーツァルトからの卒業制作。ベートーヴェン『ピアノソナタ 第11番 変ロ長調 作品22』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/06/14
  • 微笑ましい夫婦ゲンカの曲?ベートーヴェン『2つのピアノソナタ 作品14 《第9番 & 第10番》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    アウトドアとインドアの使い分け? ベートーヴェンのヴァイオリンソナタを聴いてきましたが、再びピアノソナタに戻りましょう。 第8番 ハ短調『悲愴』のインパクトは強烈でしたが、この第9番と第10番は、また優しい調子になります。 ただ、第7番から第10番までは、ほぼ同時並行の時期に作られたと考えられますので、順番に発展していった、というより、色々なタイプの曲を実験的に作っていた、ということかと思います。 『悲愴』や続く第11番は〝大ソナタ〟と題されて、その名の通り、コンサートホールで満場の聴衆を圧倒するような迫力があります。 でも、間に挟まれたこの「作品14」の2曲セットは、愛らしく、こじんまりとしていて、サロン的、室内的です。 かといって内容が薄い、というわけではないですし、むしろ、より緻密な彫琢が施されているのです。 この頃のソナタは、アウトドア用とインドア用に書き分けていたかのように感じま

    微笑ましい夫婦ゲンカの曲?ベートーヴェン『2つのピアノソナタ 作品14 《第9番 & 第10番》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
    kaiyumaru
    kaiyumaru 2021/06/09
  • ベートーヴェンを揺さぶったアフリカ魂。『ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47《クロイツェル・ソナタ》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ジョージ・ブリッジタワー 黒人ハーフの名ヴァイオリニスト ベートーヴェンは、前回取り上げたヴァイオリン・ソナタ 第6番 イ長調の最終楽章が、ことのほか大規模なものになってしまったため、他の楽章とのバランスが悪いと考え、出版に際して、新しい楽章を作曲して差し替えました。 いったんお蔵入りになってしまったフィナーレですが、もちろんベートーヴェンもせっかくの力作を打ち捨てるわけがありません。 これに見合う第1楽章、第2楽章をいつか作るつもりだったはずです。 そのチャンスはすぐに訪れました。 ある名高いヴァイオリニストがウィーンに演奏旅行に来たのです。 その名は、クロイツェル…ではありません。 ジョージ・ブリッジタワー(1778-1860)。 黒人の父とドイツ人の母をもつハーフでした。 黒人の血を引く人がヨーロッパ楽壇でもてはやされているとは、人権がようやく叫ばれたばかりの頃なのに人種差別はなかっ

    ベートーヴェンを揺さぶったアフリカ魂。『ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 作品47《クロイツェル・ソナタ》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/05/31
  • 若きロシア皇帝に捧げた〝アレクサンダー・ソナタ〟。ベートーヴェン『3つのヴァイオリン・ソナタ 作品30(第6番~第8番)』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ロシア皇帝アレクサンドル1世 ナポレオンをやっつけたロシア皇帝 ベートーヴェンは、『春』を完成したあと、さっそく新しいヴァイオリン・ソナタの作曲に取り掛かります。 1801年から翌1802年にかけてのことです。 1802年10月には、あの『ハイリゲンシュタットの遺書』が書かれていますから、耳の病に悩み抜き、苦しんでいる最中に作曲されたことになります。 この頃から、ベートーヴェンの作品に、さらに繊細さと力強さが増しているように感じます。 深く悩み傷ついた心。 芸術への使命感からその克服。 人間の弱さと強さ、その両方を表現しているベートーヴェンの音楽が、さらに深くなってきている思いがします。 1802年春に完成したヴァイオリンは3曲セットで、1年後の1803年5月に『ピアノフォルテのための、ヴァイオリンを伴う3つのソナタ 作品30』として出版されました。 まだタイトルとしてはピアノが主、ヴァイ

    若きロシア皇帝に捧げた〝アレクサンダー・ソナタ〟。ベートーヴェン『3つのヴァイオリン・ソナタ 作品30(第6番~第8番)』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/05/23
  • 光る青春の喜びと稲妻!ベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24《春》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~

    ベートーヴェンっぽくない?人気曲 ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタの中でも、いちばんポピュラーで、誰でも聞いたことある、という曲は第5番『春(スプリング・ソナタ』でしょう。 第1楽章の、優雅の極みといっていい旋律は、住宅メーカーなどのCMで、日曜日の朝の家族団欒、といったイメージで使われます。 同じ優雅さでも、貴族的な高貴な典雅さではなく、小市民のささやかな幸福、といったような、どこかくつろいだ感じを受けます。 音楽を貴族のものから市民のものにしたベートーヴェンの、ソフトな革命といえるかもしれません。 『春』という愛称は、ベートーヴェンが題したものではなく、初版にもなく、いつしかそう呼ばれるようになり、誰がいつ名付けたのか全然分かっていませんが、定着したのは、万人がそのように感じたからでしょう。 『のだめカンタービレ』の春 『のだめカンタービレ』でも、この曲がうまく使われていて、ドラマ

    光る青春の喜びと稲妻!ベートーヴェン『ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 作品24《春》』 - 孤独のクラシック ~私のおすすめ~
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    kaiyumaru 2021/05/16