たまらなく渋くてカッコいい主人公の紹介から始めたい。表紙の写真左、試験管を持つちょっと神経質そうな男が化学者アレグザンダー・ゲトラー、その隣にいる大柄のヤギひげおじさんが病理学者でありニューヨーク市監察医務局長も務めるチャールズ・ノリスだ。本書『毒薬の手帖』は、現代科学捜査の基礎を築いたこの毒物学者二人が力を合わせて人間の暗い欲望が充溢する1920年代アメリカを照射した、読み応えたっぷりの犯罪ノンフィクションである。 ゲトラーとノリスのキャラ立ちに加え、各章のタイトルはクロロホルム、シアン化合物(青酸)、ヒ素、一酸化炭素、タリウムといった、ミステリ小説・漫画でおなじみの毒物が並び、内容概略を読むだけでもテレビドラマのネタとして格好の題材のように感じる(実際アメリカ本国でドラマ化されたそうだが日本では視聴不可)。 だが、申し添えておくと、本書はゲトラーとノリスが一章ごとに毒物の正体を暴きバッ
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