大相撲九州場所10日目(24日・福岡国際センター)――最後、朝青龍がいたわるようにつり出したのは、同じ高砂一門の大関に対するせめてもの温情だったのだろう。 11年近くにも及んだ大関の座を明け渡す千代大海はつぶやいた。 「笑われるかもしれないけど、もう一回チャンスがあるのなら挑戦したい」 初場所で10勝を挙げれば、規定上、大関に復帰できる。挑戦するのは当然の権利でもあり、過去にも、三重ノ海(武蔵川理事長)のように大関復帰後、横綱に駆け上がった例だってある。 だが、千代大海の今回の決断には違和感が残る。大関在位は史上1位の65場所。賜杯も3度抱いた。数字上は立派な「名大関」だ。従来の尺度なら、「落ちたら潔く引退」という選択が重んじられる立場でもある。 一方で、最近の成績は大関の名に値するものだったのか。カド番は史上最多の14度。ここ2年、大関の合格点とされる二けた白星は一度もなく、勝ち越しにも