葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景・神奈川沖浪裏」に描かれた大きな波は、津波と解釈されることがあるが、沖合に発生する「巨大波」である可能性が高い。(KATSUSHIKA HOKUSAI, THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART) 1826年、フランスの科学者で海軍士官でもあったジュール・デュモン・デュルビル船長は、アストロラーベ号でインド洋を横断中、激しい嵐に巻き込まれた。彼はこのとき、頭上に高さ30メートルの水の壁がそそり立つのを見たという。他にも高さ25メートル以上の波がいくつも発生し、乗組員の1人は海に投げ出されて行方不明になった。だが陸に戻ったデュモン・デュルビルがこの話をすると、他に3人の目撃者がいたのに誰にも信じてもらえず、幻を見たのだろうと言われてしまった。 19世紀の科学者たちは、どんなに高い波でも10メートル程度にしかならないと考えていたため、当時数件あ