13万1726人――。これは,日本で自分の意思が問われないまま精神科に入院している,すなわち強制入院の状態が継続している患者の総数である1)。強制入院は精神障害者への差別だとして国連が定める障害者権利条約(CRPD)に反しているにもかかわらず,その件数は数十年にわたり増加傾向にある。強制入院の経験に関して研究を行う精神科医の杉浦氏は,現状を変える1つの鍵として「医療者と当事者,双方の視点に同等の価値を置いて医療の在り方を探る」ことを挙げる。その真意は何か。日本の強制入院の実態と杉浦氏の研究から見える,精神医療の在るべき形に迫る。 その入院治療,本当に適切? ――強制入院とはどのような入院形態を指すのでしょうか。 杉浦 日本の精神科には主に措置入院,医療保護入院,任意入院の3つの入院形態があり,患者本人の同意を必要としない前者2つが強制入院あるいは非自発入院と呼ばれています(表)。このうち措