その日は朝から大雨だった。2019年11月24日。長崎では、多くのカトリック信者たちが雨ガッパを羽織ってフランシスコ教皇の到着を待ち侘びていた。ローマ教皇として38年ぶりの来日。前日の夕方に羽田に到着した教皇は、翌朝のフライトで最初の訪問地である長崎へと降り立った。 その後、車で長崎市内に入った教皇は、最初に爆心地公園で核廃絶を訴え、次いで豊臣秀吉によるキリシタン弾圧が行われた西坂の丘でも演説を行った。そして昼ごろ、「パパ様」は長崎県営野球場に現れた。3万人が集う巨大なミサ。いつの間にか、雨は上がっていた。 多くの日本人信者に混じって、ミサにはベトナム人の若い妊婦も参加していた。技能実習生のマイさん(仮名)。マイさんは21歳だった2年ほど前に来日し、熊本県の工場で実習生として働き始めた。そのうち熊本市内の教会にも通うようになり、そこで知り合ったほかの信者たちと一緒に長崎を訪れることになった