「ぶれない男 熊井啓」西村雄一郎著に黒澤明の「白痴」(1951)完全版の行方のことが書かれており、興味深いのでここに記す。 黒澤は「羅生門」(1950)を撮った後、松竹で「白痴」を撮るが、最初に編集し終えた時点で「白痴」は計4時間26分になっていた。松竹は興行上の理由からカットを要求。そこで黒澤が切ったのが3時間2分の版。その3時間2分版で封切ったもののあまりの評判の悪さに三日で興行が打ち切りに。 松竹は全国封切の際にさらなるカットを黒澤に要求。そのときに黒澤明の有名な言葉が飛び出す。 「これ以上切りたければフィルムを縦に切れ!」 そのカットされた短縮版が2時間46分。現在流通しているのもこの2時間46分版である。 熊井啓監督がキネマ旬報黒澤明追悼号で「白痴」完全版を確認したと書いたのは、最初に黒澤が編集したバージョンの4時間26分のことである。 熊井監督は独自の調査により、とある中部地方