前編より続く ヨーロッパ中世に花開き、大聖堂で頂点を極めた「ゴシック美術」はどのように産み出されたのか? ドイツを代表する美術史家が、芸術を創造する人類の根本的衝動にまで遡り、ゴシックの内奥に潜む情念を鮮やかに描き出した歴史的名著の解説より、その一部を2度に分けて公開する。 ゴシック美術を生み出した特異な形式意志 『ゴシック美術形式論』 (ウィルヘルム・ヴォリンガー 著/中野勇 訳) 本書『ゴシック美術形式論』は、「抽象」と「感情移入」がより錯綜した様相をみせるゴシック美術に即して、この問いを繰り広げる。けれども最初の著作には現れない「形式意志 Formwille」についての問題意識が顕著で、「古典主義」と「ゴシック」の比較に主眼が置かれているため、直接二つの衝動の関係が問われることは少ない。むしろ『抽象と感情移入』第三章「装飾芸術」の結論部(『抽象と感情移入』一〇六~一〇七ページ)、そし