* これは怪談をするのではない、ばけものについて、いろいろと考えた事や感じたこと等、思い出すままに描いてみようと思うのである。画工である私は、ばけものというものの興味を、むしろ形の方から感じている。そんな訳で、私の百鬼夜行絵巻も文の間に添えておこうと思う。 君子は乱神怪力を語らず 孔子(こうし)様は、君子は乱神怪力を語らずといわれた。さすがに深い深い実感から生れた話だと思う。 乱神怪力を語るという事は、結局「嘘」という事に無神経だという事になる。 妖怪変化(ようかいへんげ)というものは、「無(な)」いといってしまっては曲(きょく)のないものにはちがいない。人間というものは、何事でも面白い方が好きなもので、ばけもの等も、本当は、無いのだという事になる事はちと興ざめな話なのである。 元来妖怪等というものは、人間の神秘的要求、恐怖本能、等から生れた空想を一層興味を以て潤色し工風(くふう)した一種