ニコラス・スパイクマンは第二次世界大戦の終結を見る前に若くして没した米国地政学の偉大な研究者である。 「海上権力」が世界の安全保障を決定づけることを初めて想起したマハン、世界情勢がランドパワーとシーパワーの相克にあることを「地政学」として体系づけたマッキンダー、その地政学を覇権主義の正当化に用いた異端の地政学者ハウスホーファーのあとに続き、 第二次世界大戦を目の当たりにしながら、地球規模の視点で米国の安全保障と世界戦略を描いた。その思想を見ると、今日の米国の安全保障についての考え方を理解するのに非常に役立つ気がする。 スパイクマンは「東西冷戦」を予言できなかった。何故なら「冷戦」は核兵器無くして考えられなかったし、スパイクマンは生前、その存在を知らなかった。しかし核兵器はもはや誰にとっても禁断の兵器であり、大国同士の直接対決は不可能となったため、東側社会主義陣営が崩壊したのち、再び世界はス