【寄稿】 「ちょっと盛られた」臨床試験の気付き方 臨床試験にかかわるすべての関係者へ 奥村 泰之(医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構研究部 主任研究員) ランダム化比較試験のエビデンスの質は,最高峰と考えられている。しかし,私たちが臨床試験の研究成果を読むとき,たとえ有名な学術誌に掲載されている場合であっても,その研究成果の主張をうのみにするべきではない。なぜなら,研究者の期待に添わない否定的な研究成果が得られた試験の50%は,肯定的な研究成果が得られたかのように,アブストラクトの結論部を「盛って」報告しているからである1)。 「研究成果の解釈をゆがめ,読者を欺く執筆術」は粉飾(spin)と呼ばれる1~3)。ここで,粉飾とは,①主要評価項目に関して統計的有意性が得られなかった場合に,実験的治療法の有益性を強調する報告戦略,あるいは,②主要評価項目から読者の注意をそらす報告