「二項対立」をずらす哲学 ニューアカデミズム・ブームを起こした思想書『構造と力』から四半世紀。批評家の浅田彰さん(51)が、27年在籍した京大から所属を京都造形芸術大に移した。新たな環境で、現代とどう向き合おうとしているのか。(待田晋哉) 物造る学生に期待 「こんにちは。浅田彰と言います……」。学部生に向け、カントをはじめ基本的な哲学や美学の概論を語る「芸術哲学」の初講義が15日に行われた。少し早口に自己紹介し、冒頭で「私語や携帯はやめて」と注意する。現代思想を操る人にしては意外と普通だった。 「京大はかつて、一発ホームラン主義で人材を生むところがあった。だが、その雰囲気は薄れ、1・5流の学生が増えた」。新天地を選んだ理由を語る。京大准教授から大学院長に迎えられ、「中途半端な秀才より、物を造る学生の方が哲学的なことは胸に響く」と期待する。 1983年の『構造と力』や翌年の『逃走論』は、ポス