ブックマーク / georgebest1969.typepad.jp (29)

  • 楽園はこちら側

    シリーズ 外科医のための感染症 コラム 「エビデンスないんでしょ」「いや、エビデンスは常にある」 EBM(evidence based medicine)という言葉はすでに人口に膾炙し、EBMという言葉を知らない人はほとんどいなくなりました。 ただ、未だに「アンチEBM」の人は多いですね。 「アンチEBM」よりも、もっと厄介なのは「エビデンス」という言葉を「武器化」してしまう人たちです。 例えば、Aという抗菌薬を使ってはどうでしょう、とか何日間治療しましょうか、という話をした時に、「そんなのエビデンスあるんですか」という感じで反論されるパターンです。非常にまれではありますが、「エビデンスないんでしょ」を「お前のいうことは聞かないよ」という一種の「脅し文句」として使っている先生もおいでです。 残念な話ですが、「エビデンスないんでしょ」とか「エビデンスあるんですか」とおっしゃる先生がたは、ある

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    kazu_y 2022/01/09
  • オリンピックは開催できるか

    論の理路は長い(あと、やや分かりにくい)ので、お手数ですが端折らず最後までお読みください。 以前、「成人式には行かないで」というブログを書いた。同様に、アスリーツに「オリンピックにはこないで」というメッセージを出せばよい、というご意見を頂いた。 稿のテーマは「オリンピックは開催できるか」だが、その前に「アスリーツに来ないで」というべきかについてコメントする。 アスリーツにオリンピックに来ないで、というべきではない。 成人式に行かないでほしい、という意見は、新成人が(しばしば)都会から田舎に移動し、旧友たちと旧交を温め、実家に帰り、家族親類と久方ぶりに再会する、というシナリオが容易に想定できたからだ。それは感染リスクの拡大のみならず、ハイリスクな高齢者への感染の広がりのリスク増加を意味する。成人式なんかに出なくたって成人はする。ぼくも外国にいたので成人式には出なかった。成人式に出る「価値

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    kazu_y 2021/05/10
  • 西浦博「新型コロナからいのちを守れ!」を読んで

    著者献御礼 川端裕人氏が聞き手になってまとめられた。 すごい。これまでブラックボックスになっていた第一波収束までの政府の内部事情がかなり詳しく理解できる。関係諸氏は必読だ。 西浦先生は極めて純粋な学者だし、善良な医療者だからここまで率直に、そして正直にやる。だからこそ、その文章は信用できる。今や国内外問わず、「平気で嘘をつく」ことが日常的、かつ普遍的になってきた昨今、コンテンツのクレディビリティは正直さにしかないのだと、改めて思い知る。論文書く人には常識なのだが、、、いや、最近は論文書く人ですらこのへんが怪しいこともあるのだが、、、、来、文章とはこうあるべきだ。 西浦理論、数理モデルの内容を論評する能力は僕にはない(どこかでも書いたが、ぼくは西浦先生から数理モデルの初歩の手ほどきを受けた立場だから)。が、感染症の様々な様相に対する理解、見解は概ねぼくと西浦先生は共通している。例えば、

    西浦博「新型コロナからいのちを守れ!」を読んで
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    kazu_y 2020/12/08
  • 検査について

    いまから、検査について説明します。 検査の話をすると、どんな話をしても必ずどっかからすごい怒られます。だから、この原稿もにするだけでネットに挙げないつもりでいました。ならば、基的には少なくとも最後までちゃんと読まなければ文句は言えないので(読まずに文句言う人もいますが、、、密林とかで)。しかし、最近「入院患者は全員PCRだー」といった意見があちこちで聞こえるようになったので、イヤイヤ、ネットに上げざるを得ませんでした。先回りして結論を今言っておきますが、入院患者全員にPCRは、しないほうがいいです。 相変わらず長いです(笑)。最後まで読まない人、読めない人はからんでこないでくださいね(笑)。我ながら、よい予防線だ。 まずはPCRから PCR、ポリメラーゼ連鎖反応はウイルスの遺伝子を見つける検査です。定量的な検査と、定性的な検査があります。 定量的な検査とは、ウイルスがたくさんいますよ

    検査について
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    kazu_y 2020/06/25
  • マスクについて

    この話も、当はネットに挙げたくはなかったのです。絶対怒られるから。何を言っても。 とはいえ、何も言わなければさらにデマが広がってしまうというジレンマが生じてしまいます。よって、ここでマスクについても説明します。これも長いですよ。 実は、マスクについての考え方について、新しく説明すべきことはあまりありません。どうしてかというと、その考え方は、 検査の考え方 と全く同じだからです。すなわち、 マスクの属性 だけで、マスクを論じてはならない。マスクがどのように飛沫の放出を防ぐかとか、防がないとか、富岳のシミュレーションでどうだとか、そういう「マスクの性能」は議論の一部をなすけれども、議論の全てではないってことです。 察しの良い読者はお気づきでしょう。そう、実はマスクの議論も、検査の議論同様、 状況の判断 が大事なのです。もう少し詳しく説明しますね。 マスクの効果についてはすでにメタ分析が出てい

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    kazu_y 2020/06/25
  • 緊急事態宣言はロックダウンではない、は詭弁

    安倍首相が7自治体の緊急事態宣言を出したとき、「これはロックダウンではない」と述べている。 各メディアもその解釈を追随した。「改正新型インフルエンザ対策特別措置法の緊急事態宣言は政府が対象区域を示し、具体的な措置は都道府県知事が行う。知事は同法45条1項に基づき外出自粛が要請できるが、海外と異なり無許可の外出に罰則を科すような強制力はない。通勤や通院、料の買い出しといった暮らしに欠かせない目的であれば自粛を求められない」(日経済新聞4月6日)。 しかし、これは間違いだ。詭弁、といってもよい。 ロックダウンは「概念」である。具体的にはある地域の内外の移動を止め、その地域内での外出を止めるのが「ざっくりとした」ロックダウンの概念だ。なぜ、そんなことをするのか。前者は感染の他地域への拡大を防止するためであり、後者は地域内での感染者の増加を防ぐためだ。 感染症は感染経路を遮断すれば流行は抑え込

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    kazu_y 2020/04/14
    “検疫法で扱った患者と、感染症法で扱った患者の診療の仕方が異なる、というのは関係部署の調整不足とハーモナイゼーションが足りないだけの、失敗した行政だと考える。”
  • 事実に誠意を

    これから書くことはほとんど、これまでも繰り返し申し上げてきたことと変わりない。が、同じ質問は繰り返し受けているので、再度申し上げる次第である。なお、海外からも同様の問い合わせが多いので来であれば英語でも同じ内容の文章を用意すべきだが、時間の関係で割愛させてください。Chromeかなにかでそれぞれ母国語に訳してお読みいただけると幸いです。なお、稿は特に感染症学の基礎知識やジャーゴンを知らなくても読めるように工夫はしているが、それなりに難解な内容だ。その点はご容赦いただきたい。 日COVID-19報告数が諸外国に比べて非常に少ないことに内外から注目が集まっている。あれは当なのか。検査数が少なすぎて、実際の感染者数を見誤っているのではないか、という指摘がある。 しかし、この指摘はいろいろなレイヤーにおいて間違っている。そもそも、日COVID-19の全数把握を目指していない。行政検査

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    kazu_y 2020/03/27
  • 「感染症は実在しない」あとがき

    昔書いた「感染症は実在しない」を集英社から仕立て直して出してもらうことになりました。「あとがき」を追記したので、どうぞ。 英国がCOVID-19対策で、他国と異なる対応を取ると表明したとき、世界は驚いた。国民の多くにあえて感染を許容させ、集団免疫をつけさせようというのだ。かなりの「奇手」と思った(英首相の「降伏」演説と集団免疫にたよる英国コロナウイルス政策(小野昌弘) - Yahoo!ニュース [Internet]. Yahoo!ニュース 個人. [cited 2020 Mar 19]. Available from: https://news.yahoo.co.jp/byline/onomasahiro/20200315-00167884/)。 ところが、事態は二転三転する。この感染許容策に多くの専門家が批判を寄せた。議論が繰り返され、結局、英国は他国同様、保守的で「普通の」感染対策を行

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    kazu_y 2020/03/20
    “コミュニケーションとは対話が終わったときに自分が変わる覚悟を持っている、そういう覚悟のもとで行われるもののことである”
  • 結果を出すということ(COVID対策)

    昨日、風邪の人は自宅で安静に、という話をしました。その根拠も示しました。 このことは、COVIDの数を全数把握する意味はない、ということを意味しています。風邪の数を数えても得るものは小さいからです。もちろん、数の推計は技術的に可能かもしれませんし、風邪の経済的損失も無視できませんが、さしあたりその問題は相対的には大きくない。 さて、すべての感染対策は「うまくいった」「いかなかった」の基準が必要です。日のCOVID対策は、中国以外で世界で最初に地域内クラスターを多発させ、(おそらくは)クルーズ船内での二次感染を許容しました。現段階では「当初の予定通り」とはとても言えません。来ならば、世界各国に歩調を合わせて二次感染の発生を追跡可能な範囲に止め、クルーズ内2次感染は許容してはならなかったからです。 昨日も書きましたが、感染対策はうまくいったりいかなかったりします。100%完璧にやる、という

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    kazu_y 2020/02/17
  • 「桜を見る会」問題は騒ぐ問題ではないが些事ではない

    「桜を見る会」問題は、メディアや世間が大騒ぎするような問題ではない、という意見があります。誠にそのとおりだと思います。 他方、こんなことは看過してもよい些事かといえばそうではありません。これは短期的お祭り的に大騒ぎをする問題とは思いませんが、放っておいてよい問題でもないのです。 これは、言い換えれば利益相反の問題です。ぼくの周囲には医者が多いですが、利益相反問題に無神経な医者とawareな医者がいます。前者は「桜を見る会」くらいどうだっていいだろ、という意見を持ちやすいでしょう。 メーカーからランチをゴチになったり、タクシー代を出してもらって接待されても俺の医者としての判断は変わらん。利益相反問題を看過する人はこう言います。しかし、ここが質的にヤバいのでして、詐欺師に騙されるのは「俺は騙されないぞ」という確信が高い人なのです。当に騙されないのは「俺は騙されているのではないか」という健全

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    kazu_y 2020/02/05
  • うそをつくことについて。それと、HIV感染裁判について

    人間には嘘をつく権利はある。自分や家族を守るために嘘をつく。だれだってやっていることだ。ぼくも、やったことはある。 ぼくの患者たちもしばしば嘘をつくが、ぼくはそれを非難しない。医者に嘘をついてはいけない、なんてルールはないし(つかないほうがいいけど)、嘘をついた患者を処罰する権利は医者にはない。患者が嘘をついてはいけない、と決めつけるのは医療者が患者を下に見ているからだ。頭の中で作り上げた隷属関係が患者にああしろ、こうしろという命令性を作り上げるのだ。というか、歴史的にはぼくら医者のほうがずっと患者に嘘をついてきたではないか。「告知しない」という名目での、嘘である。 雇用者と被雇用者の関係もそうである。もちろん、被雇用者は「業務上の事物」について正確に雇用者に報告する義務がある。そして、その点では逆に雇用者だって被雇用者に嘘をついてはいけない。 しかし、プライバシーの問題は別だ。被雇用者は

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    kazu_y 2020/02/05
  • 「「新型肺炎」日本の対策は大間違い」、は大間違い

    上昌広氏が新型コロナウイルス対策に意見している(https://www.fsight.jp/articles/-/46472)が基的な間違いが多い。ここに指摘しておく。 1.クリニックに風邪で受診する人に対して、新型コロナウイルスを検査すればいい 上氏は国内のコロナウイルス流行状況を把握するために外来受診の風邪患者で新型コロナウイルスの検査を推奨する。これはまったく不合理な間違いだ。 まず、日では新型コロナウイルス感染者は20人程度しか見つかっていない(2020年2月5日項記載時)。しかも全員が武漢との疫学リンクがはっきりしている。こういうフェーズのときに極めてコモンで日中の外来にやってくる風邪患者にコロナウイルス検査を行うのはまったく不合理だ。金銭的にも労力的にも割に合わない。しかも検査が殺到してしまうと検査結果が出るのが遅くなる。ぼくは2001年の米国の炭疽菌騒動を経験したが、

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    kazu_y 2020/02/05
  • 近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」批評

    近藤誠氏の「ワクチン副作用の恐怖」(文藝春秋、以下「恐怖」と略す)を読みました。 放射線医学が専門である近藤氏がワクチンを論ずるのはこれが初めてではありません。これまでも何度もワクチンの問題を取り扱っています。例えば、近藤氏は2001年に「インフルエンザワクチンを疑え」という論考を発表しています(「文藝春秋」2001年2月号)。私は当時ニューヨーク市で内科の研修医をしていましたが、この論考の科学的瑕疵を指摘したことがあります(岩田健太郎「正論」2001年5月)。 近藤氏が予防接種や感染症の専門家ではないから、この領域を論じてはいけないとは思いません。 専門家であれ、非専門家であれ、思想の自由、表現の自由は十全にあります。専門家故に見落としてしまうような大事なポイントを、非専門家が岡目八目で指摘できることも少なくありません。 大切なのは「誰が書いているか」ではなく「何が書かれているか」です。

    近藤誠氏「ワクチン副作用の恐怖」批評
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    kazu_y 2017/11/29
  • 感想「原因と結果の経済学」を読んで

    御礼(アマゾンのリンクがうまく貼り付けられない。だれか直す方法ご存じの方、教えてください〜) 因果関係と相関関係について繰り返し説く。構成がしっかりしていてとてもおもしろく読みました。 おそらく、因果、相関の違いを普段から考えている人は、スラスラと読んでいけると思います。が、これまでそういう話をまったく聞いたことがない人にはちょっと難解なだったかもしれません。「反事実」とか言われてもピンとこないでしょう。 想像するに、書は「そういう人」を想定読者に設定していたので、そこは難しいとこだと思います。で、「そういう人」は書をどう読むかというと、たぶん、「結論だけ読む」と思います。ちょうど書の帯が示唆しているように、「そうか、テレビを見せても子供の学力は下がらないんだ、ガッテン、ガッテン」と読む。おそらく、その可能性が高いです。 その根拠となるゲンコウの研究は40-50年代アメリカ

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    kazu_y 2017/02/25
  • 「本当に」医者に殺されない47の心得 [心得33] 性教育と他者

    ちょっと今回はスピンオフ。医療を離れて性教育の話をします。 もちろん、医療と性教育は完全に「別物」なのではありません。性行為にはいくつかのリスクを伴います。妊娠とその合併症のリスク(まあ、妊娠を「リスク」ととるか「慶賀すること」ととるかは、文脈依存的ですが)、感染症のリスク、あるいは(これも文脈依存的ですが)精神的なトラウマなどのリスクも。こうしたリスクは、すべて医療の守備範囲内なのです。性教育は医療と密接に関わっているといえましょう。 でも、日の性教育はイデオロギーでグンニャリ歪んじゃっています。なんか、嫌だなあ。 団塊世代のオジサンたちは「寝た子を起こすな」と積極的な性教育に嫌悪を示し、牽制をかけようとします。それに反発する人たちは、「ちゃんと教えなければいけない」と逆の極端に走ります。一種の二元論です。 逆の極端に走る例として「性器の正しい名前を教える」というものがあります。男性器

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    kazu_y 2013/08/05
  • 楽園はこちら側

    海外事情」に寄稿した文章です。許可を得てこちらに転載します(初稿)。書いたのは昨年12月なのでデータはやや古くなりましたが、「総括」なので、内容は特に問題ないと思います。御覧ください。 緒言 日の新型コロナ対策を「総括」、すなわち総合的なパースペクティブからまとめようとしたものが過去に2つ存在する。一つは、書籍になった「新型コロナ対応/民間臨時調査会 調査・検証報告書」[1]であり、もう一つは、政府が招聘した新型コロナウイルス感染対応に関する有識者会議が出した「新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について」[2]である。 しかし、前者はどちらかというと「証言集」に近く、やや厳しい言い方をすれば、「個人の感想」集であり、属人的なものだった。データ解析、ファクトの解析には乏しかった。後者については政府に依頼されて役人が突貫工事でまとめたも

    楽園はこちら側
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    kazu_y 2013/08/05
  • 新連載:「本当に」医者に殺されない47の心得

    [心得 1] 2度めもかかりつけ医にいこう 病気になって、医者にかかる。数日たってもよくならない。で、家族や友達が心配して、「大きな病院に行ったほうがいいんじゃない?」 こういうパターンってとても多いです。 でも、多くの場合は「治る途中」を見ているだけだったりします。 例えば、急性気管支炎。これは熱が出て、うっとうしい咳が出て、の病気です。よく医者は気管支炎に抗生物質を出しますが、じつは抗生物質は効かないことがほとんどで、アメリカなんかでは「抗生物質をもらわないようにしましょう」と薦めています(Ann Intern Med. 2001;134(6):521-529)。日では、抗生物質の使い方をきちんと勉強していない医者が非常に多いため、「なんとなく」抗生物質を出しちゃっているトホホなケースが多いのです。 さて、その急性気管支炎。咳がうっとうしいのが特徴ですが、多くの患者さんでは咳は7日か

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    kazu_y 2013/07/12
  • 楽園はこちら側

    海外事情」に寄稿した文章です。許可を得てこちらに転載します(初稿)。書いたのは昨年12月なのでデータはやや古くなりましたが、「総括」なので、内容は特に問題ないと思います。御覧ください。 緒言 日の新型コロナ対策を「総括」、すなわち総合的なパースペクティブからまとめようとしたものが過去に2つ存在する。一つは、書籍になった「新型コロナ対応/民間臨時調査会 調査・検証報告書」[1]であり、もう一つは、政府が招聘した新型コロナウイルス感染対応に関する有識者会議が出した「新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について」[2]である。 しかし、前者はどちらかというと「証言集」に近く、やや厳しい言い方をすれば、「個人の感想」集であり、属人的なものだった。データ解析、ファクトの解析には乏しかった。後者については政府に依頼されて役人が突貫工事でまとめたも

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    kazu_y 2013/07/12
  • 喫煙と喫煙者 そして憎悪の感情と差別

    某MLに書いた文章です。こちらにも出しておきます。 喫煙と喫煙者 そして憎悪の感情と差別 はじめに予防線を張っておきます。ぼくは90年台に、映画「インサイダー」のモデルになったジェフリー・ワイガンドの話を聞いたことがあります。彼はブラウン・アンド・ウイリアムソンの研究者(化学者)で、タバコ会社が健康被害データをいかに隠蔽していたかを、60ミニッツ(日でいうクロ現みたいな番組)に内部告発し、解雇されます。その内幕をぼくは内科研修医のときに学んだのでした。 その後、ぼくはいかに中曽根政権がアメリカの外圧にまけて外国たばこ(マルボロとか)の関税が取っ払われたかとか、当時のフィリップモリスがどのようにアメリカで減った収益をアジアに転化し、アジアの人たちの健康に悪影響を(戦略的に)与えてきたかを会社の収支報告などをまとめ、論文化しています(ばんぶうという雑誌に書きましたが、バックナンバーが思い出せ

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    kazu_y 2013/06/18
  • HPVワクチン「積極的な勧奨一時中止」を評価する

    昨日、厚労省の検討部会が開かれ、2種類のHPVワクチン接種の「積極的な勧奨を一時中止」する決定がなされた。ただし、公費負担は続けるという。 なんだかよくわからない決定だなあ、と思った人は多いだろう。「なんだかよくわからない」については同意である。 でも、ぼくはこの判断を由とする。 ワクチン推進派は、すぐに2005年の日脳炎ワクチンの問題を想起したであろう。ADEMと呼ばれる中枢神経疾患の副作用が「懸念」され、その時点で「積極的な勧奨を一時中止」という事態になってしまった。それは2010年まで続けられ、日人の抗体保有率は激減、日脳炎発症数も増加した。あきらかに厚労省の失政である。ADEMとの因果関係は不明なままだが、その発生頻度(15年間で22例)、予後(小児のADEMはほとんどが軽快、死亡記録は文献上はなく、あってもまれと考えられる)を考えると、原疾患とのバランスがとれていないからだ

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    kazu_y 2013/06/18