人間は、「パウロの回心」のように、何か画期的な出来事があって初めて次のステージへ進めるという思考に囚われ易い。「起業を目指したそもそものきっかけは何か」などの質問や「ヨーロッパでは、西ローマ帝国が滅びて暗黒の中世が始まり、輝かしいルネッサンスが起こって近代が始まる」といった思考がその典型だろう。 アナール派の重鎮である著者は、歴史を、不連続(断絶、画期)ではなく緩やかな連続線で捉えようと試みる。即ち、現代のヨーロッパの社会や心性の萌芽が、4世紀から15世紀に至る長い中世の多様性の中に見出せるという。ヨーロッパの下絵は中世に書かれたのだと。 先ず、先史時代から。「ヨーロッパ人は勇敢だが、好戦的で、喧嘩っぱやいのに対して、アジア人は思慮深く、教養はあっても平和を好み、無気力でさえある」(ヒポクラテス)。4世紀から8世紀は民族の大移動に翻弄されたヨーロッパがキリスト教化される時代。次いでヨーロッ