タグ

ブックマーク / aasj.jp (251)

  • 11月9日 紫外線に2日おきにあたる方が、毎日あたるより黒くなる(11月1日Molecular Cell掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 11月9日 紫外線に2日おきにあたる方が、毎日あたるより黒くなる(11月1日Molecular Cell掲載論文) 面白い現象を見つけてそれを誰もが納得できる仕方で説明するのは、研究の醍醐味だろう。ただ、多くの場合論文の読者が最後まで納得できるエビデンスを示すのは簡単ではなく、中途半端に終わることも多い。 著者には申し訳ないが今日紹介するフランスのGustave Roussyガンセンターとイスラエル テルアビブ大学からの論文は、私にとっては肝心の最後がよくわからないという典型の論文になってしまった。タイトルは「UV protection timer controls linkage between stress and pigmentation skin protection systems (紫外線から皮膚を守るタイマーが皮膚の防

  • 10月31日 時間をカウントする脳回路(Nature Neuroscienceオンライン掲載論文) | AASJホームページ

    私たちの海馬の嗅内野と呼ばれる領域に、場所を記憶するグリッド細胞が存在する事はノーベル賞に輝いたオキーフやモザーさんの研究によって明らかにされた。実際、外部の空間的位置に対応して反応する細胞が、脳内で一種の空間的地図を形成しているのをみると、当に感動する。一方、空間と並んで重要な時間はどのようにカウントしているのか?これについては、9月1日に同じモザーさんの研究室から、マウスが10−20秒間隔で規則正しく興奮を繰り返して、行動に時間の情報を統合している神経回路が示された。ただ、この時間は行動と密接に関わり形成されるリズムのようなものだ。しかしこれ以外にも、私たち人間はじっとしていても、頭の中で時間の経過を感じることができる。 同じようなじっとしている時の時間をマウスはカウントすることができるのか、もしできるとしたらその回路はどんな特性を持っているのかを研究した論文がNorthwester

  • 10月28日模倣の神経回路(Natureオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    進化の過程で環境とゲノムの間をさまざまな生物情報が媒介し、その中の最も重要な一つが高次神経回路だが、「模倣」「コピー」の進化への寄与を具体的に解説してくれて参考になるのがKevin N LalandさんのDarwin’s unfinished symphonyだ。残念ながら邦訳はないが、行動学や、脳の高次機能に興味がある人にはぜひ勧めたい良書だ。 このから分かるように、ほかの個体の行動をコピーする能力は、脳を持つ動物の進化に大きく寄与してきた。実際、模倣のための特殊な脳回路が存在し、それが永続的な行動の脳回路に変換していることがよくわかるのが、鳥類のsong learningだ。天安門事件以前、朝、北京の公園にはお年寄りが集まり、大事に育てた鳥の歌比べをしていたのを覚えている。今はもうそんなのどかな風景は消えてしまった、というより北京市内から胡同が消滅してしまったので、こんな経験はできな

  • 10月19日 フェースブックに書かれた文章からうつ病を診断する(米国アカデミー紀要オンライン掲載論文) | AASJホームページ

    以前紹介したように、医療現場でAIがもっとも期待されるのが、一般の人による自己診断が可能になることだ。以前紹介したのは、皮膚の腫瘤をスマフォで写真をとると、それが悪性かどうか専門医と同じレベルで診断してくれる例だが、ほかにも毎日の活動記録から医者にかかったほうがいいかをアドバイスしてくれるアプリなどが考えられる。 今日紹介するプリンストン大学からの論文は、精神科の病気、特にうつ病も同じようにAIで診断する対象になることを示した論文で米国アカデミー紀要オンライン版に出版された。タイトルは「Facebook language predicts depression in medical records(フェースブック上の言語によって医学的なうつ病の診断ができる)」だ。 この研究では病院で治療を受けた1万人あまりの患者さんからインフォームドコンセントをとって医療データとともにフェースブックに書い

  • 10月15日 収穫期に入った英国バイオバンク I 、構築と維持(10月11日号Nature 掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 10月15日 収穫期に入った英国バイオバンク I 、構築と維持(10月11日号Nature 掲載論文) 先週号のNatureにUKバイオバンクと銘打った論文が2編発表されていたので、今日と明日で紹介する。完全にオープンアクセスになっているので、実際の論文に是非アクセスしながら読んで欲しいと思う。 最初はオックスフォード大学が中心になっているが、様々な国が参加してまとめた論文でUKバイオバンクとは何かについて詳しく書いている。タイトルは「The UK Biobank resource with deep phenotyping and genomic data(詳し形質解析とゲノムデータが集まったUKバイオバンク)」だ。 21世紀人間学の最大のテーマは、個々の人間の情報をゲノム情報と統合して、個人や社会を理解することだが、そのためには

  • 10月7日:数を数えるニューロン(11月7日号発行予定Neuron掲載論文) | AASJホームページ

    私たち日人は、表意文字も、表音文字(実際には子音と母音それぞれに別れたアルファベットと異なり、仮名は音節に対応しているので表音節文字になる)両方利用する稀有の民族だが、英語でも一部は表意文字を使っている。その代表が、アラビア数字で、例えばoneという3つのアルファベットが一文字で表現されている。そしてそのルーツを辿ると、対象の具体的な数に至るのだが、この数字の認識を脳はどう処理しているのか大変興味がある。とはいえ、人間で数字の認識や計算を調べようとしても、今の画像技術ではどうしてもおおきな神経集団を追いかけるしかなく、一個一個の神経細胞がどう反応しているのかを調べることは難しかった。そのかわりに、猿を用いた実験でこの課題は研究されてきたが、想像通り数字や計算を猿がどう理解しているのか、なかなか猿の気持ちになれないため、研究の解釈には限界が伴った。 今日紹介するドイツ・ボン大学からの研究は

  • 9月2日:習慣性のない新しい合成麻薬(8月29日号Science Translational Medicine掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 9月2日:習慣性のない新しい合成麻薬(8月29日号Science Translational Medicine掲載論文) 痛みに対する薬剤開発はずっと続けられて来ているが、現在もなモルヒネを超える薬剤はないと言っても過言ではない。その結果、多くの国で医原性の麻薬中毒が国を揺るがす問題になっている。モルヒネはオピオイド受容体に結合して鎮痛作用を発揮するが、鎮痛作用の主役μ オピオイド受容体だけでなく、複数のオピオイド受容体に、様々な強さで結合して多彩な作用を及ぼし、中毒の原因になる。 今日紹介する米国ウェークフォレスト医科大学からの論文はnociceptin/orphanin FQ peptide(NOP)がμオピオイド(MOP)受容体の作用を高め、同じ鎮痛回路に発現していることに注目し、NOP/MOP両方の受容体に結合するリガンドを

  • 8月31日:遺伝子操作大腸菌を用いたフェニルケトン尿症の治療(Nature Biotechnologyオンライン掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 8月31日:遺伝子操作大腸菌を用いたフェニルケトン尿症の治療(Nature Biotechnologyオンライン掲載論文) フェニルケトン尿症は古くから知られており、私が学生の時からわかっていた遺伝疾患で、フェニルアラニンを分解するフェニルアラニン・ハイドロオキシラーぜ(PAH)をコードする遺伝子やその補酵素の機能喪失変異により起こる。結果、血中濃度フェニルアラニンの濃度が上昇し神経毒性を発揮するため、不可逆的な知能障害、感情障害が起こってしまう。 これを防ぐため、生後すぐに新生児の尿のスクリーニングで発見して、フェニルアラニンの摂取を制限して血中濃度が高まるのを防ぐ治療が行われる。実を言うと私自身の知識はここで止まっており、新生児スクリーニングと事制限でこの病気の治療開発は終わったのかと思っていた。ところが、原理的に治療が可能で

  • 8月30日 ドーパミンニューロンのシナプス形成の分子機構(9月6日号Cell掲載論文) | AASJホームページ

    CRISPR/CasやTALENの登場で、遺伝子編集は楽になり、ますます特定の遺伝子に変異を導入する手法、すなわち遺伝子を編集した結果の表現を動物で確かめるリバースジェネティックスの有用性は益々高まってきている。しかし、私が現役の頃は、ようやくトランスジェニックマウスができるようになったばかりで、遺伝子の編集など夢のまた夢だった。そのため、形質に異常を持つ動物を作成したり、集めたりした後、その原因遺伝子を明らかにするフォワードジェネティックスは、苦労はあっても研究の主流だった。かくいうわたし達も、熊大学時代は、変異マウスの遺伝子を決める事を重要な戦略にしていた。 今日紹介するスタンフォード大学からの論文はドーパミン神経のシナプス形成に関わる遺伝子を、フォワードジェネティックスで特定し、その機能の詳細を解析した極めてオーソドックスな研究で9月6日号のCellに掲載された。タイトルは「The

  • 8月29日:眼球内に遺伝子導入して視細胞を復活させる(8月23日号Nature掲載論文) | AASJホームページ

    山中iPSが発表される前から、細胞の系統をリプログラムできるという論文は数多く発表されていた。山中iPSにより、転写因子のセットを導入することで実際にエピジェネティックな状態がリプログラムできることが明らかになり、多能性の幹細胞を経ないで直接細胞の系列を変化させるdirect reprogrammingの研究は盛んになった。ただ私が把握している限りで、iPSを越えて臨床応用が見えている方法の開発にはまだまだ時間がかかるように思う。 今日紹介するマウントサイナイ医学校からの論文は、分化のリプログラムの代わりに、抑制されている分化プログラムをもう一度再活性する方法を開発して網膜内にロドプシンを発現する桿細胞を復活させ、視力を回復させようとする、リプログラムというよりプログラムを誘導する研究で、4月23日号のNatureに掲載された。タイトルは「Restoration of vision aft

  • 8月19日:乳糜管からの脂肪吸収(8月10日号Science掲載論文) | AASJホームページ

    脂肪は腸でカイロミクロンと呼ばれるリポタンパク質へと変換され、腸の絨毛内に張り巡らされた乳糜管と呼ばれるリンパ管にまず入り、そこから腹腔リンパ管、胸管を経て血中に入る。脂肪の多い事をとると、血液が濁ったように見えるのも、この経路で脂肪が吸収されるためだ。よく考えて見ると、脂肪代謝の入り口に位置し極めて重要な過程と言えるのに、脂肪の吸収についての論文をあまり読んだことは無かった。 今日紹介するエール大学からの論文は絨毛で脂肪がリンパ管に吸収される精巧なしくみを明らかにしたもので8月10日号のScienceに掲載された。タイトルは「Lacteal junction zippering protects against diet-induced obesity(乳糜管の接合のチャックが餌による肥満を防いでいる)」だ。 乳糜管が脂肪吸収に必須であることは、これまでもこのリンパ組織をノックアウト

    keloinwell
    keloinwell 2018/08/29
    “私事になるが、この研究を行ったEichmannはフランスでニコル・ドゥアランの大学院生時代、京大の私の研究室に、鶏のFlk1に対するモノクローナル抗体を作るために逗留していた。” まじか。
  • 8月17日:なぜ象は体が大きくてもがんが多発しないのか(8月14日号Cell Reports掲載論文) | AASJホームページ

    象は地上の動物の中では最も大きい動物で、産まれるまでに2年もかかる。アフリカゾウでは大人で6トンと人間の100倍、新生児で100Kgと人間の30倍の大きさがあることを思うと、妊娠期間が長いのも当然だ。とはいえ、この論文を読むまで、体が大きく、多くの細胞を作る必要がある動物でなぜがんが多発しないのかといった疑問を持ったことはなかった。言われてみれば真っ当な疑問で、この問題は昔から指摘され、体のサイズとガンの発生率に関係がないことをPetoのパラドックスと呼ぶらしい。 しかしガンの原因になる変異の多くが増殖時のDNA複製エラーによるならガンの頻度は体の大きさに比例してもいいはずで、比例しないとすると特別なメカニズムが働いていることになる。事実、同じ種の場合体が大きいほどがんになりやすい。体が大きくなることに伴うガンの危険性の問題を象は新しいLIF遺伝子を使って解決していることを示したのが今日紹

  • 8月15日:変わる蛍光抗体染色:見るから読むへ(8月9日号Cell掲載論文) | AASJホームページ

    7月31日、アイソトープ、酵素反応、蛍光などを標識した遺伝子プローブを用いて遺伝子発現を「見て」いたこれまでのin situ hybridization法を、バーコードでラベルしたプローブを用いて、発現遺伝子を「見る」代わりに、塩基配列を「読む」ことで検出するという、今年京都賞を受賞したDeisserothtたちが開発した画期的な論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/8740)。 同じように塩基配列をバーコードとして用いる方法は、抗体による組織染色にも用いることができることを示したのが今日紹介するスタンフォード大学からの論文で8月9日号のCellに掲載された。タイトルは「Deep Profiling of Mouse Splenic Architecture with CODEX Multiplexed Imaging (CODEX多重イメージングによるマウス脾

  • 8月2日:進化から病気の遺伝子を割り出す(Nature Geneticsオンライン版掲載論文) | AASJホームページ

    全ゲノムレベルのSNP解析や塩基配列決定により病気のリスクを前もって知る遺伝子診断が、一般の人にも広がりを見せているが、0.1%以上の人に見られる変異は全体の1000分の1に過ぎず、アミノ酸変異が起こっている変異のほとんどは、病気との相関があるのかないのかわからないまま、放置されているのが現状だ。 今日紹介するイルミナ社の研究所からの論文は変異の病気へのインパクトを進化の観点から推定できないか調べた研究で,ゲノム解析をリードするイルミナならではの論文だと感じた。タイトルは「Predicting the clinical impact of human mutation with deep neural networks (人間にみらる遺伝子変異の臨床的インパクトをニューラルネットワークAIで推定する)」だ。 この研究は、稀な変異が臨床的に問題があれば、進化の過程で淘汰されているはずだが、多

  • 7月31日:組織中で遺伝子配列を読んで、各細胞で発現しているRNAを正確に定量する(7月27日号Science掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 7月31日:組織中で遺伝子配列を読んで、各細胞で発現しているRNAを正確に定量する(7月27日号Science掲載論文) この人の頭の中はどうなっているのかただただ驚く天才がどの分野にもいる。これらの人に共通するのは、明確な目的とゴールを定め、そのためにアッと言わせる技術的イノベーションを重ねていく点だ。私が読む論文の範囲でいうと、スタンフォード大学のKarl Deisserothはその一人だろう。光遺伝学を始め彼のグループから発表された新しい技術は、いつもアッといわせる、脳を見る、測るという一点に絞って、いつも新しい技術的可能性を開拓しているように思う。 毎回、こんな事までやっているのかと思わす彼のグループからScienceに発表された今日紹介する論文を読んで、「まさかこんなことまでチャレンジしているとは予想もつかない』と当に驚

    keloinwell
    keloinwell 2018/07/31
    STARmap。この論文はすごくいい仕事だと思う。
  • 7月27日 キリスト教が新しい地域に受け入れられる条件(Nature Human Behavior 7月号掲載論文) | AASJホームページ

    AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 7月27日 キリスト教が新しい地域に受け入れられる条件(Nature Human Behavior 7月号掲載論文) 全ての世界宗教は、最初は地域宗教だった。もちろんキリスト教も例外でなく、最初はイエスが始めたユダヤ教の小さなセクトだった。新約聖書を読むと、前半はイエスの生涯と思想についての伝聞と言える4つの福音書だが、後半はユダヤ人でありながらコスモポリタンでもあったパウロの様々な地域に住む信者に対する書簡が占めており、キリスト教が民族宗教を超えた普遍的、世界的宗教へと発展する萌芽を読み取ることができる。ただ、何度も迫害を受けていた、「この世の王」を認めない個人の宗教が、世界宗教へと発展できたのは、コンスタンチヌス1世によりローマの国教と定められ、政治と一体化できたからだという議論は今も続いている。事実、三位一体、テオトコス(マリ

  • 7月4日 人間の寿命の限界はまだ見えない?(6月29日号Science掲載論文) | AASJホームページ

    統計学的な話だが、次の1年を生きることができる確率は、年齢とともに低下していく。ところが、105歳を超えて生きたスーパー高齢者になると、このカーブが低下し、死亡率が頭打ちになることを示唆するデータが出されている。私も含めて105歳まで到達することはないほとんどの人にとっては関係ない話なのだが、人間の寿命の限界を突き止めたいという思っている研究者にとっては大事な問題だ。 今日紹介するローマのサピエンツァ大学からの論文はこの可能性についてイタリアでの調査を示すとともに、現在どんな取り組みが行われているのかも合わせて教えてくれる研究で6月29日号のScienceに掲載された。タイトルは「The plateau of human mortality: Demography of longevity pioneers(人間の死亡率は頭打ちになる:長寿パイオニアの人口統計学)」だ。 この問題の難しさは

  • 6月15日:超音波による脳機能操作の真実(6月6日号Neuron掲載論文) | AASJホームページ

    昨年11月号のNatureに超音波を脳研究や治療に使う可能性についてのレポートが掲載され(Landhuis Nature 551:257, 2017)、それまで考えたこともない超音波(ものの振動)で脳が操作できるという話には驚いた。この中では、超音波を使ってナノ粒子を活性化して、中に詰めた薬剤を遊出させる方法など、なるほどと納得できる技術の紹介もあった。しかし超音波を脳に照射することで皮質神経細胞の興奮を刺激でき、これを使ってピンポイントの脳操作を期待する研究が増えていることも報告されていて驚いた。電流や磁場ならともかく、超音波がなぜ神経興奮を誘導できるのか、誰も説明できておらず、当に磁場照射や電流に匹敵する方法に発展するのか、誰でも疑問を持つ。 今日紹介するカリフォルニア工科大学からの論文は超音波照射は脳神経細胞に直接作用するのではなく、聴覚を通して効果を及ぼすことを示した研究で6月6

    keloinwell
    keloinwell 2018/06/15
    "これまでの超音波による脳操作実験の全否定になっているといわざるをえない。"
  • 6月14日:神の顔(6月11日発行PlosOne掲載論文) | AASJホームページ

    ずいぶん昔になってしまったが2007年CDBのDoug Sippさんと共著でNatureが運営していたウェッブサイトに「Dualities of Christ and stem cells(幹細胞とキリストの二重性)」という小文を寄稿したことがある(https://www.nature.com/stemcells/2007/0708/070823/full/stemcells.2007.76.html)。ちょうど山中iPSが人間でも可能であることが発表された頃で、Nature のエディターだったDeWittにiPSの社会的インパクトについて書くように頼まれた。当時は、再生医学や創薬に役に立つという話ばかりが世の中で騒がれていたので(今もだが)、違う切り口で考えてみようと、キリストとiPSを比較するというかなり挑戦的な内容の話を書いた。iPSの登場で、それまで絶対的に非対称だった生殖細胞系列

  • 6月11日 サルからヒトへの進化に関わる遺伝子(5月31日号Cell掲載論文) | AASJホームページ

    類人猿、古代人類、現代人類のゲノム解析が進んだおかげで、ヒト特異的遺伝子の探索が加速している。最初の論文は2015年ドレスデン・マックスプランク研究所から発表されたARHGAP11B 遺伝子で、神経前駆細胞の分化を抑制して、増殖を高める。その結果、皮質の大きさが変化し、マウスに導入すると脳にシワができるという面白い研究だった(http://aasj.jp/news/watch/3151)。 今日紹介する新しいヒト特異的遺伝子はその複雑性で、サルからヒトへのスイッチだけでなく、人間の脳構造を考える上でもおもしろい可能性を秘めている気がする。アムステルダム大学と、カリフォルニア大学サンタクルズ校から発表された論文で、5月31日号のCellに掲載された。タイトルは「Human specific NOTCH2NL genes affect Notch signaling and cortical