どこの国へ行っても、必ずあるのが食べ物と飲み物。私はドイツ政府観光局に勤務していた若い頃から、旅先で料理や飲み物の写真を撮り続けています。「日本人は何でも写真に撮る!」と言われたこともありましたが、今や、世界中の人々が料理の写真を撮ってSNSで拡散しています。 私はいわゆるインスタ映えとは関係なく、自分がおいしいと思う味、気候風土に育まれて、長らく愛されている素朴な味わいが好きです。食文化はその土地とそこに生きる人々を知る大きな手掛かりとなります。『ドイツ地ビール夢の旅』などの著作でも、食文化を、ライフスタイル、宗教、歴史や風土を反映する重要なものとしてとらえてきました。 撮影したおびただしい写真の一枚一枚を見ると、その時々の私の心情はもちろん、日差しや風や気温までも、不思議なほどありありとよみがえります。連載第1回は、ギリシャの乾燥した空気、強い日差しと暑さのなかで、紺碧(こんぺき)の海