農林作物を荒らす有害鳥獣の被害対策に取り組む山口県下関市豊北町の朝生地区が、シカやイノシシの隠れ場所となる耕作放棄地に牛を放し、草を食べてもらう「山口型放牧」を始めている。山口、周南、岩国市でも導入しており、深刻化する獣害を防ぐ方法として期待される。【大坪菜々美】 山口型放牧は、和牛を電気柵で囲った水田や耕作放棄地などに放牧する県独自のスタイル。耕作放棄地の解消や牛の飼育管理の省力化と共に、和牛が草を食べることで見通しが良くなり、野生動物が集落に近寄りにくい環境が生まれ、…
「昨日、自宅のある地区がタリバンの支配下に入りました。私のように欧米の機関に関わったことがある人間は、タリバンに捕まれば殺されるかもしれない」。7月下旬、アフガニスタン西部ヘラートで会った公共政策を学ぶ学生、ファルザナさん(20)が、声を絞り出すように話した。「外国に逃げるしかない」 ファルザナさんは、過去に約1年間、赤十字国際委員会(ICRC)のボランティアとして活動した。戦闘の被害者や貧しい人々を訪ね、彼らが求めていることを調査するなどしてきた。「長年紛争に苦しんでいる人々を少しでも助けたい」。政府の保健当局の職員になる目標もある。 ファルザナさんは街で友人と談笑しているとき、親からの電話で自宅の地区がタリバンの支配下に入ったことを知った。地元でファルザナさんがICRCのボランティアをしていたことは知られている。「タリバンは政府や国際機関への協力者を特定するために聞き回るだろう。戻れば
種目別の平均台の練習中、遠くを見つめる米国のシモーン・バイルス選手=有明体操競技場で2021年8月3日、宮間俊樹撮影 近代オリンピックは1984年のロサンゼルス五輪から商業主義が急速に推し進められたと言われます。近年は政治的思惑に経済的利権も絡みあう一大国家事業ともなっており、行き過ぎた商業主義はたびたび批判の的にもなってきました。 今回の東京五輪でも、パンデミックの中での開催に日本国民の多くが疑問の声を上げる中、国際オリンピック委員会(IOC)はNBCユニバーサル(米放送大手)から支払われる巨額の放映権料などの収益を優先したと指摘されています。 私が暮らすロサンゼルスから見ても、コロナ禍が「商業化された五輪」のゆがみを際立たせる結果になったと感じています。 開会式の米視聴者数 過去33年で最低 実際に米国でも「ワクチン普及率が低い日本での五輪開催は危険すぎる」などと否定的な声が多くありま
新型コロナウイルスの発生源を巡る論争が米中間で再燃している。米国では中国・湖北省武漢のウイルス研究所から流出したという見方が再び浮上しているのに対し、中国側は米国の軍関連施設から流出した可能性があると主張。中国メディアや在外公館を動員し、情報戦を展開中だ。 「米国は感染対策での失策の責任を転嫁し、他国をおとしめるために政治的に起源の問題を利用している」。中国外務省の趙立堅副報道局長は7月30日の定例記者会見で、米国を名指しで批判した。70カ国近くが起源問題の「政治化」に反対し、世界保健機関(WHO)に書簡を送ったと強調したうえで、「米国はWHOの専門家を招き、(米軍関連施設の)フォート・デトリックなどを調査する必要がある」と改めて主張した。 中国が反撃に出た背景には、国際社会からの…
「今度の戦争に敗れた一つの理由は主観的な観念性に走って科学を媒介とした客観性、世界性から遊離したことにあった」。終戦から5日後の1945年8月20日。小紙に高坂正顕(こうさか・まさあき)・京都大人文科学研究所長の長文の談話が掲載された▲カント研究で知られた哲学者の高坂は日本人が抱いていた自信、自尊心について「外に目をふさいで己(おのれ)を高しというような趣はなかったか」と疑問を示し、「ひとりよがり」な日本の自己認識、世界認識に敗因を求めた▲今の日本も似た問題を抱えてはいないか。未曽有のコロナ禍にもかかわらず楽観論や希望的観測が横行し、五輪開催という国家目標の実現を優先するあまり、国民の安全を二の次にするような議論があった。科学的知見や客観性が重視されているようには見えない▲ワクチン敗戦、コロナ敗戦といった言葉も使われる。有効なワクチンを開発できず、科学技術の遅れを露呈した。当初は有効に見え
沖縄県内で水難事故が増加している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って沖縄を訪れる観光客は大幅に減っているのになぜかと探ってみると、意外にもその理由の一因も新型コロナウイルスの影響だった。【竹内望/那覇支局】 「沖に流されている、助けてくれ」。7月18日午後4時40分ごろ、沖縄本島南部・糸満市の海岸でスタンドアップパドルボード(SUP)をしていた県内在住の男性(40)が携帯電話でレンタル業者に助けを求めた。男性は10分前に息子(5)と海岸を出たばかり。午後6時10分ごろ、通報を受けた那覇海上保安部が糸満市の喜屋武(きゃん)漁港から西に約2・5キロの海上で漂流する親子を発見し、約15分後にヘリコプターで救助した。 親子はライフジャケットを着用していたが初心者。当時は陸から沖に風速8メートルの風が吹き、約3キロ流された。那覇海保は男性だけでなく、レンタル業者に対しても風を勘案してSUPを貸し出
反戦や反核について、若い人たちに熱いメッセージを送る黒谷友香=大阪市淀川区で2021年7月29日、菱田諭士撮影 1945年8月9日の原爆投下から12年後の長崎を舞台に、対照的な2人の女性を軸にした映画「祈り―幻に長崎を想(おも)う刻(とき)―」が20日に全国で公開される。高島礼子とダブル主演した俳優・黒谷友香は「76年前ってすぐそこの話。(核兵器は)今も研究されていて、終わっていません」と、スクリーンを通じて若い世代に訴える。反戦や反核という重いテーマで複雑な役を演じたことや、新型コロナウイルス禍もあって、俳優としての役割を強く感じるようになったという。 「祈り―」(松村克弥監督)は、劇作家・田中千禾夫(ちかお)が実話を基に書き下ろした戯曲「マリアの首」を映画化した。原爆で焼けた浦上天主堂の解体計画が持ち上がり、カトリックを信仰する鹿(高島)と忍(黒谷)たちが、がれきに埋もれた聖母マリア像
切り絵による手作り絵本「きせきのやしのみ」=愛知県一宮市で2021年7月20日午後3時57分、川瀬慎一朗撮影 第二次世界大戦中、島根県出身の兵士が、出征先のフィリピンで、同郷の戦友の名を記して流したヤシの実が、奇跡的に故郷に流れ着いたという実話をもとにした、切り絵の絵本「きせきのやしのみ」を、愛知県一宮市の主婦、亀山永子さん(48)が作製した。インターネット通販のアマゾンで販売を始めている。【川瀬慎一朗】 この実話は、1975年7月、島根県大社町(現出雲市)の港で釣りをしていた男性が、漂流していたヤシの実を拾い上げたことから始まる。実の表面には「昭和十九年七月十日 所原 陸軍伍長 飯塚正一君」と書かれていた。「所原」の地名が近くにあったため、男性は宛名の「飯塚さん」本人を探し出した。 筆跡などから、フィリピン・マニラで飯塚さんと親しかった同郷の山之内辰四郎さんが、飯塚さんと別れた後流したも
「もはや先進国ではない日本は、『堕(お)ちる道を堕ちきる』ほかない――」。東京オリンピックが閉幕した。数々の不祥事に加えて、東京都の新型コロナウイルス感染者数が期間中に過去最多を記録するなど問題にまみれた大会だった。中島岳志・東京工業大教授が、日本と五輪の本当の姿を射抜き、処方箋を提示した。【聞き手・鈴木英生・オピニオングループ】 日本衰退を可視化した東京五輪 まずは、あまりに問題だらけの大会でも、全力を尽くされたアスリートの方々に、敬意を表したい。そのうえで、今やるべきではない五輪をやってしまったとしか言いようがない。せめて、あと1年延期すべきだった。今大会の反省を踏まえて、五輪のあり方は根底から問い直されねばならない。 1964年の東京大会が戦後復興と高度成長の象徴ならば、今回は日本の衰退を可視化したイベントとして語り継がれるだろう。新型コロナウイルス禍への政府の対応のまずさはもちろん
性交同意年齢を巡り、「50代の私と14歳の子とが同意があった場合に罰せられるのはおかしい」との発言をしたことについて陳謝する立憲民主党の本多平直衆院議員(当時)=国会内で2021年6月8日午後1時22分、竹内幹撮影 「何が起こっているか分からず、怖くて動けなかった」。13歳の娘は、母親にこう話し、性被害を受けたことを打ち明けたという。性交同意年齢を巡り、立憲民主党の衆院議員だった本多平直氏が「50代の私と14歳の子とが恋愛した上での同意があった場合に罰せられるのはおかしい」と発言した問題は、本多氏の離党・議員辞職という事態になった。一部では「党の対応が厳しすぎる」との声も出ているが、この母親は「被害の実態が分かっていない。許せない発言です」と訴える。騒動の陰で、被害者の声が置き去りにされていないだろうか。【菅野蘭/デジタル報道センター】 発言から約2カ月後に離党、議員辞職 まず性交同意年齢
「TOKYO2020」の旗が掲げられた福島県営あづま球場=同市佐原で2021年7月10日午後5時25分、玉城達郎撮影 招致決定から約8年。東京オリンピックは新型コロナウイルス感染拡大による史上初の延期を経て、23日に開幕を迎える。招致の源流だったはずの「復興五輪」の理念は薄れ、アスリートにとって最高だったはずの舞台はほぼ無観客での開催となる。いまだ開催意義は見えず、関係者は葛藤を抱えながら本番を待ち受ける。 あっけない幕切れだった。「復興五輪」の象徴だった東日本大震災の被災地・福島県での野球・ソフトボールは、注目度の高い開幕戦を含めて一転、無観客での開催となった。大会組織委員会と福島県が発表したのは10日午後。前日深夜に無観客に踏み切った北海道の判断を後追いする形となったが、政府も組織委も引き留める姿勢は見られなかった。組織委は「福島県からの連絡を受けて公表した。県の判断」と経緯を淡々と説
「真夜中の東京は海の底」 <真夜中の東京は海の底にいるような気がする> ひとりで過ごす夜の孤独をある女子大生は海の底のようだと言う。 新型コロナウイルスの終息が見えない中、経営難に陥っている会社や店舗は多い。自粛によって苦しめられているのはビジネスだけではない。 地方から都市部の大学へ入学した学生たちは、慣れない街でひとり暮らしをしている。親元から離れて初めての生活。オンライン授業が多く、大学で友だちと会うこともできない。アルバイトもままならず、誰とも話をしない日もある。精神的に落ち込み、うつの症状が表れる人も少なくない。 こういう若者たちに対して政府はどんな対策を考えているのだろうか。大学はいったい何をしているのか。 どれだけもがいても、暗闇からの出口が見えない中でフラストレーションがたまり、政府の無策に矛先を向けたくなるが、それでいいのかなとも思う。 コロナ禍が長引くにつれて、私たちの
ずっと、見守っていてほしい――。36人が亡くなった「京都アニメーション」放火殺人事件から18日で2年。家族や友人を突然奪われた悲しみは癒えず、今も「会いたい」と思いが募る。京アニに憧れて入社し、志半ばで逝った若きアニメーターたち。その遺志を継ごうと歩み出す人もいる。 「2年たっても何も変わらない。悲しみが薄れることはない。萌(めぐむ)を忘れることはない」。亡くなった中で最年少だった大野萌さん(当時21歳)の祖父、岡田和夫さん(71)は話す。 萌さんは幼少時からアニメが好きで、雑誌の余白や裏紙に絵を描き、岡田さんや両親に見せた。中学時代には市選管のポスター公募で優秀作に。高校在学中、アルバイトでお金をため、京アニの養成塾へ入った。大工の岡田さんが手作りした作業台で作画の練習を重ね、2018年に正社員に採用された時は「京アニの社員になったよ」と報告してくれた。原画同士の動きをつなぐ「動画」を担
招致決議書を手に記念写真に納まる(左から)竹田恒和日本オリンピック委員会(JOC)会長、猪瀬直樹東京都知事、森喜朗日本体育協会名誉会長=東京都新宿区の東京都庁で2013年1月8日午後1時9分、森田剛史撮影 東京五輪の大会関係者が節目で決まって口にしてきた言葉がある。「アスリートファースト(選手第一)」だ。競技環境の整備を選手主体で考えるなどの意味がある。東京五輪招致の頃から国内で急速に使われるようになったが、関係者に都合良く利用されてきた。 招致時の立候補ファイルに「スポーツと感動の中心にアスリートを据える」と明記された。全競技会場の85%が選手村から半径8キロ圏内に集中する計画だったが、大会経費の高騰で早々と見直しが図られた。 16年夏に都知事に就任した小池氏は東京五輪に向けて「アスリートファーストを実現したい」と語り、この年の流行語にもノミネートされた。しかし、19年にドーハで開催され
女子バレーといえば「東洋の魔女」を育てた「鬼の大松」こと大松博文監督や、アニメ「アタックNo・1」などで、スパルタ指導や「スポ根」のイメージが強かった。しかし、それは遠き昭和の残像だと思わせる新しい風が、令和の女子バレー界に吹いている。下部に低迷する実業団チームを1年で昇格させてVリーグ1部(V1)2連覇という、まるでマンガのような偉業を成し遂げたJTの吉原知子監督(51)。彼女の就任直後の指示は「みんなでお茶してきなさい」だった。【大阪本社運動部長・辻中祐子】 波瀾万丈だった現役時代 最初に、吉原さんの歩みを簡単に振り返っておく。中学1年でバレーを始め、北海道・妹背牛商高3年で早くも全日本代表に選ばれた。卒業後は名門・日立に入社し、1992年バルセロナ五輪に出場するなど、中心選手として活躍した。 しかし94年、プロ化を巡る騒動の影響で大林素子さんとともに解雇される。海外移籍を余儀なくされ
“トップ・オブ・トップ”が今秋、宝塚歌劇団を静かに去る。特別顧問で専科の轟悠。入団以来36年、王道の二枚目から狂気の犯罪者、リアリズムを追求した歴史上の人物と自在に演じ、新しい男役像を切り開いてきた。7月に始まった退団公演「婆娑羅(ばさら)の玄孫(やしゃご)」には「感傷にひたるより、下級生に学んできたものを渡したい」と臨み、後輩の道しるべであり続けている。見る者から「まとっている空気まで男役として完結していた」とも言われるほど極めた芸の道を振り返りたい。【反橋希美】 「プレゼントをいただいた公演」 作品は星組公演。室町幕府の設立に活躍し、文化芸能に精通したことから「婆娑羅大名」と呼ばれた佐々木道誉(どうよ)の血をひく男の波乱に満ちた人生を描く。 時は江戸時代、道誉の子孫である細石(さざれいし)蔵之介(轟)は、長屋で子どもたちに学問や剣術を教えて暮らしていた。父に突然廃嫡されたため、佐々木高
「ドライブ・マイ・カー」の一場面。主演の西島秀俊さん(左)と共演の三浦透子さん=Ⓒ2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会 「ドライブ・マイ・カー」の脚本賞受賞に対して、出演者らがコメントを寄せた。 主演の西島秀俊さん 「濱口監督、カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、心からお祝い申し上げます。 監督が村上春樹さんの原作を問いとし、過去と真摯(しんし)に向き合う事で人は絶望から再生することができるという答えを示したこの作品が、世界の人々の共感を呼んだのは本当に素晴らしい事だと思います。監督の、人への深い洞察と愛情の力です。これからもたくさんの傑作を作ってください。楽しみにしています。おめでとうございます!」 共演の三浦透子さん 「濱口監督、作品に関わった全ての皆さん、本当におめでとうございます。皆さんと仕事ができたこと、自信を持って届けられる作品が完成できたこと、カンヌ映画祭で上映できたこと、そし
五輪へ<全集中>の菅政権。感染拡大の不安をぬぐえぬ国民――。次期総選挙に出馬しないという伊吹文明元衆院議長(83)=京都1区、当選12回=は何を見ているのか。去りゆく賢人の胸中を聞いた。 ◇ 「政府の説明がヘタ。全くヘタ。あらゆる説明がヘタ。初めはワクチンの打ち手が足りなかったが、今は進み過ぎた。説明すりゃいいのに、説明を尽くさないで、すぐ謝る。これが一番よくないと思うね」 「(西村康稔(やすとし)経済再生担当相が踏み込んだ)酒の取引停止もね、法律を知っていれば、そんなこと簡単にできるわけがありませんよ。『官邸主導』の悪い癖がついちゃって(自民)党に相談がないんだ。聞いてみると、下村(博文・政調会長)も二階(俊博・幹事長)も全く知らないんですよ。昔は、法律・予算はもちろん、行政行為に至る前に、党のしかるべき人に報告があったよね」
酒類販売事業者向けに、休業要請に応じない飲食店との酒類取引停止の依頼を撤回する旨を記した内閣官房のコロナ室と国税庁連名の文書=東京都内で2021年7月16日午後4時7分、塩田彩撮影 政府が法的根拠もなく民間事業者を使って圧力をかける――。法治国家としておよそ信じられない出来事が起きた。緊急事態宣言下で酒類提供を続ける飲食店への対応を巡る一連の騒動である。すでに撤回された現在でも批判はくすぶり続ける。この騒動ににじむ菅義偉政権の体質を、識者とともに考えた。【塩田彩/デジタル報道センター】 酒類提供する飲食店への対応で まずは経緯を振り返りたい。新型コロナウイルス対策を担当する西村康稔経済再生担当相は8日、緊急事態宣言下にもかかわらず酒の提供を停止しない飲食店への対応を強化すると発表し、主に二つの手法を挙げた。一つ目が、金融機関を通じて、融資先の飲食店に法令順守や感染防止対策の徹底を働きかける
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