問1 このたび傘寿を迎えられたご感想とともに、これまでの八十年の歳月を振り返られてのお気持ちをお聞かせください。 ものごころ付いてから、戦況が悪化する十歳頃までは、毎日をただただ日向で遊んでいたような記憶のみ強く、とりわけ兄や年上のいとこ達のあとについて行った夏の海辺のことや、その人達が雑木林で夢中になっていた昆虫採集を倦きることなく眺めていたことなど、よく思い出します。 また一人でいた時も、ぼんやりと見ていた庭の棕梠の木から急にとび立った玉虫の鮮やかな色に驚いたり、ある日洗濯場に迷い込んできたオオミズアオの美しさに息をのんだことなど、その頃私に強い印象を残したものは、何かしら自然界の生き物につながるものが多かったように思います。 その後に来た疎開先での日々は、それまでの閑かな暮らしからは想像も出来なかったものでしたが、この時期、都会から急に移って来た子どもたちを受け入れ、保護して下さった