若手にチャンスを与えるような企業や社会の仕組みを意図的に作る必要 十分な基礎訓練の上に実際に仕事をしながら学ぶことが、人が育つ一番いい方法だ。ところが、人口の高齢化で、日本の社会はどこでもベテランばかりになってきた。そういう環境の中では、若手は補助的な仕事をすることが多くなり、彼らが権限をもって責任ある仕事をするチャンスそのものが減ってきている。短期的には、ベテラン自らが仕事をした方が効率的だ。しかし、若手から育つ機会を奪うことのツケは大きい。ベテランの活力は次第に衰えるし、新しい環境への対応も難しくなる。技術の発達で、仕事の中で私たちヒトに求められる能力は、ITではできないものに変わってきている。知識を知恵に変える能力はその一つである。若手にチャンスを与えるような企業や社会の仕組みを意図的に作って、彼らの能力を高め、最大限生かせるようにする必要がある。(『日本経済新聞』2010年1月14