寒い冬の日にじいちゃんちの車庫に猫が現れた。 かわいそうだから冬の間だけと言って、毛布をもらい、エサをもらい、春になる前にはじいちゃんからヘンテコな名前をもらい、じいちゃんの家族になった。 ばあちゃんを亡くして寂しくしていたじいちゃんは猫を死ぬほど甘やかした。 猫はじいちゃん以外の下々の者たちの全てをガン無視し、じいちゃんが家にいればそばに優雅に寝そべり、出かける時は玄関まで見送り、食事の時はじいちゃんの膝に乗り、寝る時はじいちゃんの寝室の前で、夜伽を待つお姫さまの様に待機していた。 そしてじいちゃんがボケた。 どんどん物忘れがひどくなり誰の事もわからなくなってそのうち野良猫が家に入って来ると言っては猫を家から追い出すようになった。 家の外でオゥオゥと哀しみにくれる猫の声を聞いて、同居の家人が慌てて猫を家に入れる。じいちゃんにも何度も説明する。でも家人の隙を見てじいちゃんは猫を追い出す。