「人民裁判のようになってしまわないだろうか」 裁判員制度とともに平成21年5月に導入された強制起訴制度。検察が独占してきた起訴権に、民意を反映させる新制度の設計に携わった元法務省幹部は当時、日本の刑事司法が「法治」から「情治」に傾くことを危惧したと振り返る。 検察が不起訴にした事件について、選挙権のある国民で構成する検察審査会(検審)が「起訴すべきだ」と2回議決すれば強制的に起訴される制度。この10年間で9件13人が強制起訴された。このうち東京電力福島第1原発事故の旧経営陣3人を除く8件10人の判決が確定したが、有罪となったのは2件2人にとどまる。残りは無罪に加え、罪に問えず裁判を打ち切る免訴と公訴棄却だった。 無罪多発の背景には、捜査のプロの検察が証拠上、刑事責任を問うのは難しいと判断した事件だけに、有罪立証のハードルがより高くなることがある。 ■■■ 「強制起訴によって社会的な地位を失