ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (11)

  • 仕事ごときで燃え尽きてしまわないために、何をすればいいのか──『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』 - 基本読書

    なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか 作者:ジョナサン マレシック青土社Amazonこの『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』は、日語では燃え尽き症候群、英語ではバーンアウトと言われたりする症状──それまで熱心に仕事をしていた人が、やる気を失ってしまうなど──について書かれた一冊である。 著者のジョナサン・マレシックはもともと大学の神学教授で終身在職権も獲得した、一般的には「勝ち組」と言われそうなステータスのある状況にいた人物だが、彼自身が燃え尽き症候群に陥り、仕事どころではなくなってしまう。 書は、彼のそうした実体験も合わせながら、燃え尽き症候群とはじっさいに何なのか、どのように定義できるのか。また、われわれは今後燃え尽き症候群に陥らないように、どう対策をうっていけばいいのかについて語っている。僕自身は仕事をしていて燃え尽き症候群といえるような状態に陥ったことは一度もないが、周りには幾人も

    仕事ごときで燃え尽きてしまわないために、何をすればいいのか──『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』 - 基本読書
  • 仕事が行き渡らない世界がやってきたら、我々はどうやって生きていけばいいのか?──『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』 - 基本読書

    WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論 作者:ダニエル・サスキンドみすず書房Amazon近年、AIなどのテクノロジーの進歩は、人間から仕事を奪う。いや歴史が証明しているようにテクノロジーの進歩は新しい仕事を作り出すから人は新しい仕事へと移るだけだ。その移行には数十年かかるから現代を生きる我々の救いにはならない! など、さまざまな「テクノロジーの進歩と仕事」についての主張が交わされてきた。 数十年に渡るそうした論争の末、近年のノンフィクションでは、「多かれ少なかれテクノロジーの進歩は人間の仕事を奪う」方向に傾いているように思う。たしかにこれまで多くの仕事は、自動車やトラクターが馬を(少なくとも移動の手段としては)不要としたように、テクノロジーの進歩によって消え、また新たな仕事を作り出してきた。だが、それはいうても新しいテクノロジーが結局人間の完全な代替にはならな

    仕事が行き渡らない世界がやってきたら、我々はどうやって生きていけばいいのか?──『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』 - 基本読書
  • 2020年に刊行され、おもしろかったノンフィクションを振り返る - 基本読書

    2020年ももうすぐ終わるので、読んでおもしろかったノンフィクションを振り返っていこうかと。今年はまるっとの雑誌でノンフィクションの新刊ガイドを担当しており、例年よりもたくさん読んだような、あまり変わらないような。とはいえ、おもしろいノンフィクションには山ほど出会ったので、思い出しながら書いていく。 まずは科学系から! LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界 作者:デビッド・A・シンクレア,マシュー・D・ラプラント発売日: 2020/09/01メディア: Kindle版科学系のノンフィクションの中で最もおもしろかったのはなにかといえば、デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラントによる『LIFESPAN 老いなき世界』になる。シンクレアは老化の原因と若返りの方法に関する世界的な権威で、老化は克服できる病であり、克服すべきだ、とこのの中で強烈に主張している。ほとんどすべての

    2020年に刊行され、おもしろかったノンフィクションを振り返る - 基本読書
  • 暗殺作戦、苦難のすべてがこの一冊にまとまった、圧倒的な密度を誇る大著──『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』 - 基本読書

    イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史(上) 作者:ロネン バーグマン発売日: 2020/06/04メディア: Kindle版イスラエルの諜報機関──モサド、シン・ベト、アマンの3機関はその能力の高さから世界中に恐れられている。何より暗殺の作戦数が豊富で、一説によるとイスラエルがこれまで国として行ってきた暗殺作戦は2700件にも及ぶという。イスラエルが国として成立したのが70年前の1948年であることを考えると、驚異的な数といえる。 というわけでこの『イスラエル諜報機関』は、そんなイスラエルの諜報機関がこれまで行ってきた暗殺作戦を、その最初期から現代に至るまで丁寧に追った一冊になる。イスラエルの諜報機関の情報って公開されてんの?? と疑問に思ったが、やはりまったく公開されていないみたいで、国防省に調査協力を求めても無意味。イスラエルの各情報機関に、法律の規定に基づいて過去の文書の資料開示を要求す

    暗殺作戦、苦難のすべてがこの一冊にまとまった、圧倒的な密度を誇る大著──『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』 - 基本読書
  • 孤独な少女の人生を描く、全米500万部の話題に劣らぬ内容を伴った超ベストセラー──『ザリガニの鳴くところ』 - 基本読書

    ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ発売日: 2020/03/05メディア: 単行(ソフトカバー)この『ザリガニの鳴くところ』は著者ディーリア・オーエンズが70歳になってはじめて執筆小説であると同時に、またたく間に全米500万部、2019年のアメリカでもっとも売れた作品となった、湿地の少女を描く文学・ミステリィ小説である。 正直言って売上がどれだけ凄かろうがまったくおもしろみを感じない、というケースは往々にしてあるわけで、売上がなんぼのもんじゃい!! と(売上何万部と帯とかに書いてあるについては)謎の気炎を上げながら読むのだが、作に関してはよくもまあこんな作品がそんだけ売れてくれたなあ、と感謝をしたくなるようなである。端的にいって、とても美しく残酷な風景が描かれていて、とてつもなくおもしろい。 湿地で一人孤独に住まう少女の人生を追いながら、そこで起こった殺人事件の犯人

    孤独な少女の人生を描く、全米500万部の話題に劣らぬ内容を伴った超ベストセラー──『ザリガニの鳴くところ』 - 基本読書
  • 世界に対する認識そのものが問われる、SF密室ミステリィ──『世界樹の棺』 - 基本読書

    世界樹の棺 (星海社FICTIONS) 作者:筒城 灯士郎,淵゛出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/11/17メディア: 単行(ソフトカバー)この『世界樹の館』は、『ビアンカ・オーバーステップ』という作品で衝撃のデビューを飾った筒城灯士郎の最新作である。ビアンカの何が衝撃のデビューだったのかというと、もともと筒井康隆がはじめてライトノベルを書いたという触れ込みの『ビアンカ・オーバースタディ』という作品があった。筒城灯士郎はその続篇を勝手に書いて新人賞に応募してきて、権利面などの困難さはあるものの、それをはねのけるだけのパワーを持った作品であったためにデビューに至ったという経緯があるのである。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp で、実際『ビアンカ〜』って、コメディからシリアスまで縦横無尽にこなし、メタ・パラフィクションであり、能力バトルであり異世界物であり

    世界に対する認識そのものが問われる、SF密室ミステリィ──『世界樹の棺』 - 基本読書
  • ネットワークという観点から近年の歴史を語り直す──『スクエア・アンド・タワー:ネットワークが創り変えた世界』 - 基本読書

    スクエア・アンド・タワー(上): ネットワークが創り変えた世界 作者:ニーアル ファーガソン出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2019/12/06メディア: 単行スクエア・アンド・タワー(下): 権力と革命 500年の興亡史 作者:ニーアル ファーガソン出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2019/12/06メディア: 単行「スクエア・アンド・タワー」、直訳すると「広場と塔」というのは不思議な書名だが、これはそれぞれネットワーク型と階層型の社会や人間関係全般をさしている。 たとえば、人間の暮らしはこれまで多くの場面において階層型の構造が支配的であった。上に立つ人間が下の人間に情報や命令を伝え、それが下の人間へと広がっていく「塔」の構造。一方近年はネットワーク優位な時代といわれる。単純に階級に応じて力の強さが決まる階層型に対して、水平に広がった集団の中での力関係は、複数

    ネットワークという観点から近年の歴史を語り直す──『スクエア・アンド・タワー:ネットワークが創り変えた世界』 - 基本読書
  • 科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書

    事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学 作者: ターリシャーロット,上原直子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/08/11メディア: 単行この商品を含むブログを見る事実では人の行動は変わらないという。議論をしたときに「これこれこういう事実がある」という主張をしても相手の意見が変えられなかった、ということは多かれ少なかれみな体験しているものではないだろうか。たとえば、アメリカではワクチンを摂取することで知的障害などが発生するリスクがあるというデマが拡散して、そのせいで百日咳やおたふく風邪が今更蔓延するというアホくさい状況が発生している。 ワクチンによって知的障害リスクが上がるのは完全にデマなので、科学的な事実の啓蒙を行えばいいでしょ、と思うかもしれないが、実はこれには全然効果がないのである。ある実験では反ワクチン思想を持つ親を集め、麻疹にかかった子どもの痛まし

    科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書
  • ピカチュウはなぜピカチュウなのか『オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで』 - 基本読書

    オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで (岩波科学ライブラリー) 作者: 窪薗晴夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2017/05/19メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見るバクバクべるとかサクサク進むとか世の中には豊富なオノマトペが存在している。しかし、たとえばサにもクにもサクにも、どこにも速さをあらわす意味はこめられていないわけだから、速さをあらわす場合はメクメクでもマクマクでもなんでもいいのではないかという気がしないでもない。だが、マクマク進むといわれても「なんかこれじゃない……」感が多くの人にとってはするだろう。それはなぜなのか。 書『オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで』は、そうしたオノマトペに関わる謎を解き明かす一冊である。たとえば記事タイトルにも使わしてもらった謎の一つ、「ピカチュウはなぜピカチュウなのか」というのにも明

    ピカチュウはなぜピカチュウなのか『オノマトペの謎――ピカチュウからモフモフまで』 - 基本読書
  • アレルギーはなぜ増えているのか──『失われてゆく、我々の内なる細菌』 by マーティン・J・ブレイザー - 基本読書

    失われてゆく、我々の内なる細菌 作者: マーティン・J・ブレイザー,山太郎出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2015/07/02メディア: 単行この商品を含むブログを見るツイッタを眺めていると時々「むかしはアレルギーの人間がいなかったのは……わかるな?」みたいな、「アレルギーの人間は死んだからだよ」的な答えを誘発させようとする内容のツイートが流れてくる(実際、そう理解している人を何人もみた)。でも実際、アレルギーって現代病なんだよね。ピーナッツ・アレルギーは今や50人に1人の割合で存在しているが、1997年から2008年にかけてピーナッツ・アレルギーと診断された子どもの割合は3倍に増加した。 確かにアレルギーや喘息が昔は少なかったというと、今これだけありふれているのだから少し違和感があるのはわかる。それでも、それが現状であり、つまるところそこにはなにか理由があるのではないかと推測

    アレルギーはなぜ増えているのか──『失われてゆく、我々の内なる細菌』 by マーティン・J・ブレイザー - 基本読書
  • 「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) - 基本読書

    森博嗣先生の新刊。「これからの働き方」をテーマに書いてほしいという依頼を受けて書いた一冊とのことで、就活自殺やら、ブラック企業が〜社畜が〜といった仕事に関する悲観的な言質が多いが、そんな世界に生きている、これから生きていこうとする人へ向けたエッセイになっている。個人的には森先生が最近書いているノンフィクション群の中ではテーマ的に具体的で、今まであまり語られたことのなかったジャンルの話なのでいちばん面白かった。 仕事というのは、ほとんどの人にとっては今必要なものか、いずれ必要になるものであって、それだけ興味をかきたてられる人も多いせいか、自分なりの仕事幻想の投げつけあいで溢れかえっているように見える。ノマドが〜フリーランスが〜なんてのは序の口で、就活生がまるきりなれるはずのない職業を夢みていたり。 あるいはノマドを批判している人間も視点がまるっきり遠かったりする。グローバルなやり方を推進して

    「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) - 基本読書
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