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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (10)

  • 柴崎友香『百年と一日』 - 西東京日記 IN はてな

    解説で深緑野分も書いてますけど、なかなか魅力を伝えることが難しい。 ジャンルとしては短編小説になりますが、10ページにも満たない作品がほとんどで、3ページほどのものもあります。 この長さだといわゆるショート・ショート的なものを想像しますが、星新一のショート・ショートや、あるいは最近中高生に人気の「5分後」シリーズに比べると、最大の特徴はオチがないことです。 冒頭の作品は「一年一組一番と二組二番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して2年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」と題されていますが、基的にはこのタイトル通りのことが起こります。 もちろん単純に会えないだけではなく、そこには不思議なめぐり合わせもあるのですが、するすると時間が流れていきます。 この「時間の流れ」というのは書の大きな特徴で、とにかく時間が流れます。 大河ドラマの「

    柴崎友香『百年と一日』 - 西東京日記 IN はてな
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    kiku72 2024/04/05
  • 『デューン 砂の惑星PART2』 - 西東京日記 IN はてな

    映像、音ともに隙のない映画。さすがドゥニ・ビルヌーブという感じですね。 前作に引き続き、砂の惑星やサンドワームの描き方はいいですし、ハルコネン家の兵士たちが崖の上へと浮き上がるように移動する動きとか、ハルコネン家のファシズム的な祭典のときに打ち上がる花火的なものとか、「おおっ!」となる映像がいろいろあります。 ストーリーとしては、けっこう前作の内容を忘れてしまっているところもあり、ベネ・ゲゼリットの設定とか忘れていた部分もありましたけど、見ていくうちにだんだんと思い出していくので、特に前作を復習してからじゃないというものでもないでしょう。 基的には、救世主に祭り上げられようとする主人公が、あえて救世主を演じて敵を打ち破るという話ですが、ティモシー・シャラメがやるので説得力がでますね。「ひょっとしてこいつは?」と思わせるような魅力がある。 『レディ・バード』で見たときから、特別な存在感があ

    『デューン 砂の惑星PART2』 - 西東京日記 IN はてな
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    kiku72 2024/03/30
    “ 映像、音ともに隙のない映画。”
  • チョン・イヒョン『優しい暴力の時代』 - 西東京日記 IN はてな

    1972年生まれの韓国の女性作家の短編集。河出文庫に入ったのを機に読みましたが、面白いですね。 「優しい暴力の時代」という興味を惹かれるタイトルがつけられていますが、まさにこの短編集で描かれている世界をよく表していると思います。 「優しい暴力」の反対である「優しくない暴力」は80年代半ばくらいまでの韓国には吹き荒れていました。書の訳者である斎藤真理子が訳した同じ河出文庫のチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』では、むき出しの直接的な暴力が描かれていました。 ところが、経済が成長し、民主化が進み、軍が民衆を弾圧するようなむき出しの暴力は鳴りを潜めました。 でも、「暴力」は社会の中にあって、ふとした瞬間に顔を見せているというのが、書が描く世界です。 冒頭の「ミス・チョと亀と僕」は、父の恋人でもあったミス・チョことチョ・ウンジャさんと高齢者住宅で働く主人公の奇妙な関係を描いた作品で、ユ

    チョン・イヒョン『優しい暴力の時代』 - 西東京日記 IN はてな
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    kiku72 2024/03/13
    “972年生まれの韓国の女性作家の短編集。河出文庫に入ったのを機に読みましたが、面白い”
  • 『哀れなるものたち』 - 西東京日記 IN はてな

    この作品については以前アラスター・グレイによる原作小説を読んでいて、映画化という話を聞いたまず最初の感想は、「あの話を映画化できるの?」というものでした。 以前のブログ記事では、原作小説のあらすじを次のように紹介しています。 怪人的な容貌を持つ天才医師ゴドウィン・バクスターによってスコットランドのグラスゴーで創造されたベラ・バクスターは20代の女性の身体に幼児のような脳を持つ美貌の女性。その姿に一目惚れをしたマッキャンドレスは彼女に求婚、プロポーズは受け入れられるが彼女は弁護士のウェダバーンとヨーロッパ大陸に駆け落ちしてしまいます。 彼女の並外れた性欲が引き起こすドタバタ劇は、やがて貧富の差や女性差別といった19世紀の社会問題を取り込み、幼児のように無邪気だったベラは社会問題に関心を持つ一人の女性活動家へと成長していきます。 morningrain.hatenablog.com 以上の部分

    『哀れなるものたち』 - 西東京日記 IN はてな
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    kiku72 2024/02/15
  • 飯田高、近藤絢子 、砂原庸介、丸山里美『世の中を知る、考える、変えていく』 - 西東京日記 IN はてな

    サブタイトルは「高校生からの社会科」。このサブタイトルからは同じ有斐閣から出た『大人のための社会科』を思い出しますが、いくつか違っている点もあります。 morningrain.hatenablog.com まず、「大人のため」が「高校生から」となっていることからもわかるように、書は高校生、特に進路選択に悩む高校生を1つのターゲットにしています。 書は、環境、貧困テクノロジー、ジェンダーという4つのテーマについて、政治学、経済学、法学、社会学の4つの視点からアプローチする構成になっています。 例えば、環境問題について興味がある生徒がいたとして、書を読むと、自分にとって政治学、経済学、法学、社会学のどのアプローチがしっくりくるかということがわかるのです。 というわけで、高校の進路指導室に1冊あるといいかもしれません。 そして、『大人のための社会科』が井手英策・宇野重規・坂井豊貴・松沢

    飯田高、近藤絢子 、砂原庸介、丸山里美『世の中を知る、考える、変えていく』 - 西東京日記 IN はてな
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    kiku72 2023/09/24
  • 岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    私たちはさまざまなものを「所有」し、その権利は人権の一部(財産権)として保護されています。「所有」は資主義のキーになる概念でもあります。 同時に、サブスクやシェア・エコノミーの流行などに見られるように、従来の「所有」では捉えきれない現象も生まれています。 書は、この「所有」の問題について研究者が集まって書いたなのですが、まずは冒頭の岸政彦とつづく小川さやかの論文で、私たちが生活していく上でかなり強い足場として認識している「所有」が、そうした足場になっていない社会の様子が紹介され、その後に経済学歴史学や社会学の立場から「所有」が論じられています。 「所有」だけではなく、「制度」や「秩序」といったものについても考えが広がる、面白い内容になっています。 目次は以下の通り。 第1章 所有と規範―戦後沖縄の社会変動と所有権の再編(岸政彦) 第2章 手放すことで自己を打ち立てる―タンザニアのイ

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    kiku72 2023/08/04
    “粗悪品が多く出回る中で、購入の決め手になるのはやはり人間関係なのです。”
  • ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』 - 西東京日記 IN はてな

    2019年のTwitter文学賞の海外編1位など、さまざまなところで評判を読んでいたがこの度文庫化されたので読んでみました(それにしても屋大賞の翻訳小説部門第2位とTwitter文学賞が帯で並んで紹介されているのは熱いですね)。 全部で24篇の短編が収録されており、全部が基的には短いです。基的には「最低」な人生の一コマがさまざまな形で切り取られており、そういった意味では『ジーザス・サン』や『海の乙女の惜しみなさ』のデニス・ジョンソンや『奪い尽くされ、焼き尽くされ』のウェルズ・タワーあたりの近年のアメリカ文学の流れを思い出させるのですが、読み進めていくと、それらとは少し違います。 著者のルシア・ベルリンは1936年にアラスカに生まれた女性で、鉱山技師だった父親の仕事の関係で各地を転々としつつ、チリなどでも過ごした経験を持ちます。 3回の結婚離婚をしながらシングルマザーとして4人の息

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    kiku72 2022/04/30
    “ アル中の作家は今までもたくさんしましたが、自らのアル中の状態をここまで冷静に、そして切迫感をもって書ける作家はなかなかいないと思います。”
  • 渡辺努『物価とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近、ガソリンだけではなく小麦、用油などさまざまなものの価格が上がっています。ただし、スーパーなどに行けば米や白菜や大根といった冬野菜は例年よりも安い価格になっていることにも気づくでしょう。 このようなさまざまな商品の価格を平均化したものが書のテーマである物価です。 著者はまず、物価を蚊柱、個々の商品の価格を個別の蚊に例えています。個別の蚊はさまざまな動きをしますが、離れてみると一定のまとまった動きが観測できるというのです。 書は「個別の蚊の動きを追っても蚊柱の動きはわからない」という前提を受け入れつつ、同時にスーパーなどの商品のスキャナーデータなどミクロのデータも使いながら、「物価とは何か?」、さらには「日の物価はなぜ上がらないのか?」という謎に挑んでいます。 ジャンルとしては経済エッセイということになるのでしょうが、理論と実証を行き来する内容は非常に刺激的で面白いですね。

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    kiku72 2022/03/16
  • 倉田徹『香港政治危機』 - 西東京日記 IN はてな

    2014年の雨傘運動、2019年の「逃亡犯条例」改正反対の巨大デモ、そして2020年の香港国家安全維持法(国安法)の制定による民主と自由の蒸発という大きな変化を経験した香港。その香港の大きな変動を政治学者でもある著者が分析した。 香港返還からの中国と香港のそれぞれの動きを見ながら、さまざまな世論調査なども引用しつつ、いかに香港が「政治化」したか、そして香港を取り巻く情勢がいかに変わっていたのかを論じています。 目次は以下の通り。 序 章 香港政治危機はなぜ起きたか 第一章 中央政府の対香港政策――鄧小平の香港から,習近平の香港へ 第二章 香港市民の政治的覚醒――経済都市の変貌 第三章 「中港矛盾」の出現と激化――経済融合の効果と限界 第四章 民主化問題の展開――制度設計の意図と誤算 第五章 自由への脅威――多元的市民社会と一党支配の相克 第六章 加速する香港問題の「新冷戦化」――巻き込み

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    kiku72 2021/12/26
    “民主と自由の蒸発という大きな変化を経験した香港。その香港の大きな変動を政治学者でもある著者が分析した本。”
  • 善教将大『維新支持の分析』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近、「ポピュリズム」という言葉が、政治を語る上で頻出するキーワードとなっています。アメリカトランプ大統領に、イギリスのBrexit、イタリアの五つ星運動にドイツのAfDと、「ポピュリズム」というキーワードで語られる政治勢力は数多くいるわけですが、では、日における「ポピュリズム」といえば、どんな勢力がそれに当てはまるでしょうか? そこで、小泉純一郎や都民ファーストの会と並んで、多くの人の頭に浮かぶのが、おおさか維新の会でしょう。特に代表を務めていた橋下徹は多くの論者によって代表的な「ポピュリスト」と考えられていました。 「橋下徹という稀代のポピュリストによって率いられ、主に政治的な知識が乏しい層から支持を調達したのが維新である」というイメージは幅広く流通していたと思います。 しかし、このはそうしたイメージに対し、実証的な分析を通じて正面から異を唱えるものとなっています。 目次は以

    善教将大『維新支持の分析』 - 西東京日記 IN はてな
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    kiku72 2019/02/06
    しかし橋下徹も吉村洋文も病的な嘘つきで嘘つきに何度も騙されるのは愚者と言いたくなるのはこらえて 維新批判は @hiroyoshimura @gogoichiro とかに引用RTじゃなくてメンションでして支持者にこいつら嘘つきと見せつけてます
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