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ブックマーク / note.com/stand_books (13)

  • 寺尾紗穂「天使日記」より⑤|スタンド・ブックス

    寺尾紗穂『天使日記』収録「天使日記」より一部転載 4 月23日 しばらく会わない日が続いたので、「どうしてるかね」と子供たちと出かける。近所のテニスコート付設の小さな公園に行ってみるがここでは会えない。やはり桐の木の公園でないと会えないのかもしれず、向かう。しばらく現れない。今日はもう会えないかな、ときぬに言うと、きぬが少し動いた。現れたようだ。 「初級の合格おめでとう、と伝えて」 きぬが見えない相手に向かって言うと、 「ありがとうって」 「そういう修行があるみたいだけど、どれくらいで当の天使になれるの?」 天使に質問したきぬが「えっ」と驚いている。聞くと、中級、上級もあり、それも細かく分かれているのでだいぶ先らしい。 「桐の木があるけど、この木に精霊はいるか聞いてみて」 きぬがしばらくしてまたも驚いて「え、まじ?」と笑っている。 「だんごむしの精霊に会ったって」 家から桐の公園にいく途

    寺尾紗穂「天使日記」より⑤|スタンド・ブックス
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    kiku72 2022/05/05
  • 寺尾紗穂「天使日記」より③|スタンド・ブックス

    寺尾紗穂『天使日記』収録「天使日記」より一部転載 2017年4月13日 ゆいときぬで校門を出ると天使が待っていてくれて、途中まで一緒に帰ってきたという。ゆいはこの日も手だけ見えたという。きぬ曰く、「歩いているのであまり落ち着いて話せなかった」らしいが、天使は天使ミカエルの下で修行をしているそうだ。途中で「神様が呼んでる」と言っていなくなったという。 サタンは大きくよろめき、十歩ほど後へ退いた。十歩目に膝を屈し、辛うじて持っていた巨大な槍で身を支えた。その有様は、この地球上で、横ざまに噴出した地下の突風や洪水のために、山がその松林もろとも麓から吹き飛ばされ、半ば地面に埋まってしまうのに似ていた。叛逆の天使らは全員これを見て愕然とした。だが、それ以上に、彼らを憤然とさせたのは、味方の中でも最強の戦士がかくも無残に敗れるのを見たことであった。われわれの陣営は欣喜雀躍し、勝利はわが手中にありといわ

    寺尾紗穂「天使日記」より③|スタンド・ブックス
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    kiku72 2022/05/03
    “寺尾紗穂『天使日記』収録「天使日記」より一部転載”
  • 寺尾紗穂「天使日記」より①|スタンド・ブックス

    寺尾紗穂さんの最新エッセイ集『天使日記』(スタンド・ブックス/2021年)が、前作『彗星の孤独』とともに電子書籍化されました。 電子書籍発売を記念し、書に収録されている表題エッセイ「天使日記」(p63~p118)より、序盤(~p79)を5回に分けて転載します。 第1回は冒頭から「2017年4月5日」(p63~p68)までです。 寺尾紗穂『天使日記』収録「天使日記」より一部転載 天使日記 もうあの日から一年が過ぎた。二〇一七年四月五日。二重の意味でこの日は忘れられない日だ。加川良さんが死んだ日。そして、長女のきぬが天使に出会った日だ。まさか良さんが天使になったわけではあるまいが、良さんを迎えに来た天使が、たまたまきぬと出会ったのかもしれない。 2017年4月5日「おかあさんは信じてくれないかもしれないけど」 きぬが夜になって切り出した。昼間公園で、男か女かわからない人に会ったという。公園の

    寺尾紗穂「天使日記」より①|スタンド・ブックス
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    kiku72 2022/05/02
    “寺尾紗穂『天使日記』収録「天使日記」より一部転載”
  • 「スーさんのこと」 (寺尾紗穂『天使日記』より)|スタンド・ブックス

    寺尾紗穂さん(音楽家・文筆家)の最新エッセイ集『天使日記』(スタンド・ブックス/2021年)が、前作『彗星の孤独』(同/2018年)とともに電子書籍化されました。 電子書籍版発売を記念し、書に収録されている書下ろしエッセイ「スーさんのこと」(p22~p32)を掲載いたします。 ※2022年3月10日(木)の「朝日新聞」朝刊、鷲田清一「折々のことば」欄にて、篇が紹介されました。 寺尾紗穂『天使日記』(スタンド・ブックス)より転載 スーさんのこと 映画のコメントを求められることが多く、試写でもDVDでもなく公開前にリンクを送ってもらうことも増えた。國友勇吾監督の『帆花』もそうだった。布団に入ってiPadで視聴を始めた。帆花さんは、生まれるときへその緒が切れ、脳に酸素がいかなくなったことにより、心肺停止の状態で生まれ、脳死に近い状態で生き続けている少女だ。目は見開き、まばたきもほとんどせず、

    「スーさんのこと」 (寺尾紗穂『天使日記』より)|スタンド・ブックス
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    kiku72 2022/03/10
  • 寺尾紗穂『天使日記』に関するお知らせ|スタンド・ブックス

    『天使日記』(初版)に収録されている「福岡 降り止まぬ雨」(p237)について、2018年高知新聞連載当時、文章に登場する「彼女」にいただいた修正を反映させた最終版を収録すべきところを、著者の不注意により修正前の文章が載る形となりました。深くお詫びすると共に、ここに正しい全文を読める形として提示させていただきます。 福岡 降り止まぬ雨(修正版) 先日ある大学で4日間の集中講義をした。外部からの受講生のなかに、私がその土地でライブをするとき、必ず来てくれては終わったあと、直接感想を伝えてくれる人がいた。彼女は研究者でもあって、いくつかの大学で授業を持っているということを授業最初の全員の自己紹介のとき知った。参加メンバーは授業中何か感じたことがあると、それぞれよく発言してくれたが、彼女のある発言は印象的だった。それは「自分が人をさばくような物言いを、知らずにしていないか」よく考える、ということ

    寺尾紗穂『天使日記』に関するお知らせ|スタンド・ブックス
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    kiku72 2022/01/17
  • 〈まえがき〉公開 『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(スズキナオ著)|スタンド・ブックス

    2021年12月発売、スズキナオ『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』より、「まえがき」を公開します。スズキナオ 1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』、『集英社新書プラス』、月刊誌『小説新潮』などを中心に執筆中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、『関西酒場のろのろ日記』(ele-king books)、パリッコとの共著に『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』(スタンド・ブックス)がある。 まえがき 私の最初の著書『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』がスタンド・ブックスから

    〈まえがき〉公開 『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(スズキナオ著)|スタンド・ブックス
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    kiku72 2021/12/13
  • パリッコ・スズキナオ『月刊のみタイム』 011 ライター・トルーさん/與座ひかるさん「熱が出たとき何時に何を食べても許される」( 2021.09.10)|スタンド・ブックス

    皆でお酒を飲むことの楽しさを忘れちゃいそう。くじけそう。それでも頑張って酒を飲むのが酒の穴。 今回は我々のなかでやたらと話題になる、面白い記事を書きつづけているヤベエおふたり、WEBメディア『デイリーポータルZ』の神ライター、トルーさんと與座(よざ)ひかるさんをお招きしました。 トルーさんのあの名作記事はどのように生まれたのか。與座さんの「鬼束ちひろ聴きどき」とは。過去最高に神々しい回をお届けします。 トルーさんの記事:https://dailyportalz.jp/writer/kijilist/86 與座ひかるさんの記事:https://dailyportalz.jp/writer/kijilist/97 パリッコ/スズキナオ編著『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』スタンド・ブックスから絶賛発売中(好評2刷!)。 http://stand-books.com/nomi

    パリッコ・スズキナオ『月刊のみタイム』 011 ライター・トルーさん/與座ひかるさん「熱が出たとき何時に何を食べても許される」( 2021.09.10)|スタンド・ブックス
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    kiku72 2021/09/17
  • 増田薫 『いつか中華屋でチャーハンを』編集後記(日向コイケ)|スタンド・ブックス

    あなたは中華料理屋で「オムライス」を頼んだことはあるだろうか? もしなければ、ぜひ一度騙されたと思って試してみてほしい。 中華鍋で香ばしく炒められたチキンライス、バター代わりのラードが香る薄焼きの卵。中華どんぶりに盛られたそれを見た時の感動は、未だに忘れることができない。 「中華料理」と「オムライス」。見慣れていたはずのふたつがかけ合わさったことの発見と興奮。そんな中華料理の奥深さを知ったのは、この連載がきっかけだった。 *** 「いつか中華屋でチャーハンを」(以下「いつチャー」)は、どこでも地元メディア『ジモコロ』で2019年の8月から全12回にわたって連載された中華グルメ漫画だ。 作者である増田薫が全国各地に趣き、その土地の中華料理屋でひたすらに飯をう。行く先々で彼を待ち構えているのは「酸菜」や「ダル麺」「シチュー」など、どれも中華屋ではあまり聞き慣れない一風変わったメニューばかりだ

    増田薫 『いつか中華屋でチャーハンを』編集後記(日向コイケ)|スタンド・ブックス
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    kiku72 2020/12/15
  • 増田薫『いつか中華屋でチャーハンを』スタンド・ブックスから単行本発売!|スタンド・ブックス

    −−いつからか中華料理屋で炒飯とかラーメンをほとんどべなくなってしまった。中華屋のカレーとオムライスのせいだ−− 8人組ソウルバンド「思い出野郎Aチーム」の増田薫が、定番から一歩外れた「美味」を求めて描く、グルメ漫画エッセイの新たな金字塔!(?) WEBメディア「ジモコロ」の人気連載に、各話への追記や書籍限定描き下ろし新エピソードも加えて単行化! (電子書籍【電子限定オールカラー版】も同時期刊行) 【基書誌】増田薫著『いつか中華屋でチャーハンを』 2020年12月11日発売 体1,600円(税別) 四六変形判並製 256ページ 著者自装 ISBN:978-4-909048-10-3 C0095 http://stand-books.com/itsukachahan/

    増田薫『いつか中華屋でチャーハンを』スタンド・ブックスから単行本発売!|スタンド・ブックス
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    kiku72 2020/12/04
    “ド「思い出野郎Aチーム」の増田薫が、定番から一歩外れた「美味」を求めて描く、グルメ漫画エッセイの新たな金字塔!(?)”
  • 『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』 記事の思い出 (スズキナオ)|スタンド・ブックス|note

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    kiku72 2020/09/06
  • 大‌阪・‌千‌鳥‌温‌泉‌に‌『深‌夜‌高‌速‌バ‌ス‌に‌100‌回‌ぐ‌ら‌い‌乗っ‌て‌わ‌かっ‌た‌こ‌と』‌の‌鏡‌広‌告‌を‌出‌し‌た‌話(スズキナオ)|スタンド・ブックス

    大‌阪・‌千‌鳥‌温‌泉‌に‌『深‌夜‌高‌速‌バ‌ス‌に‌100‌回‌ぐ‌ら‌い‌乗っ‌て‌わ‌かっ‌た‌こ‌と』‌の‌鏡‌広‌告‌を‌出‌し‌た‌話(スズキナオ) スズキナオさんの著書『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』収録されている「銭湯の鏡に広告を出した話」は、銭湯の鏡広告を通しそれに関わる人たちの人生を描き、の中でもとても印象に残る話だ。社会学者の岸政彦さんは「これが生活史だ」と絶賛した。これは、「銭湯の鏡に広告を出した話」を書いたスズキナオさんが、その文章を収録した自著の広告を銭湯の鏡に出した話。 ******* 大‌阪‌市‌此‌花‌区‌梅‌香‌と‌い‌う‌場‌所‌に‌「千‌鳥‌温‌泉」‌と‌い‌う‌銭‌湯‌が‌あ‌る。‌駅‌か‌ら‌の‌距‌離‌で‌い‌う‌と‌阪‌神‌電‌車‌の‌千‌鳥‌橋‌駅‌か‌ら‌徒‌歩‌5‌分、‌JR‌西‌九‌条‌駅‌か‌ら‌徒‌歩‌1

    大‌阪・‌千‌鳥‌温‌泉‌に‌『深‌夜‌高‌速‌バ‌ス‌に‌100‌回‌ぐ‌ら‌い‌乗っ‌て‌わ‌かっ‌た‌こ‌と』‌の‌鏡‌広‌告‌を‌出‌し‌た‌話(スズキナオ)|スタンド・ブックス
    kiku72
    kiku72 2020/06/11
    “千‌鳥‌温‌泉」‌の‌鏡‌広‌告、‌若‌干‌数‌で‌す‌が‌ま‌だ‌募‌集‌中‌と‌の‌こ‌と”
  • 『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』 記事の思い出 (スズキナオ) その3|スタンド・ブックス

    朝日新聞「天声人語」でも紹介されるなど話題となり、現在までに5刷と大好評の『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)。 著者・スズキナオさんが、収録の全6章29編についての思い出を語ります。 各章ごとに6日連続公開、第三章です! (前回の第2章はこちら) 第3章 目的地まで移動してる時というのは、人間にとって一番の許された時なんじゃないかーー旅 ⑩ “たこせんべい”の楽園 明石~淡路島たこせんの旅何も調べずに出かけて長い距離を歩き、なかなか心細い旅だった。その後、明石と淡路島を結ぶジェノバラインに何度も何度も乗ることになるとは、この時はまだ知る由もなかった。 今、私の荷物の中に合計何枚のたこせんがあるのだろう。1000枚ぐらいあるかもしれない。近くのベンチに座ってべ比べてみる。大きく切られたタコが入っていて、さっぱりしつつもあとを引く塩加減に抑えてあるもの。

    『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』 記事の思い出 (スズキナオ) その3|スタンド・ブックス
    kiku72
    kiku72 2020/04/17
    この本面白かったよ。数年前の記事でも今は閉店していますというのがあってせつなかったりするが、そこも貴重だ
  • 編集後記(森山裕之) 寺尾紗穂『彗星の孤独』|スタンド・ブックス

    寺尾紗穂さんのことは、ファーストミニアルバム『愛し、日々』(2006年)を聴いて初めて知った。 私は当時、雑誌『クイック・ジャパン』(『QJ』)の編集をしており、ライターの北沢夏音さんと特集記事をよく一緒に作っていた。北沢さんとは企画の話をする中でいつも音楽の話はしていたが、その時は、仕事というニュアンスではなく、とても個人的な感じの強い口調で、多分わざわざ電話をいただいて言われた。 「森山くん、今すぐ寺尾紗穂さんの『愛し、日々』を聴いてみて」 北沢さんがそこまで言うことは珍しい。というか、あんな風に何かを薦められたのは後にも先にもあの時だけだ。すぐ、レコード店に買いに行き、CDをプレイヤーにのせた。聴いた後すぐ、北沢さんに電話をした。 「北沢さん、聴きました。今すぐ寺尾さんに会いに行きましょう」 その直後に、『愛し、日々』の発売記念のライブが下北沢のラカーニャであったので、ライブを取材し

    編集後記(森山裕之) 寺尾紗穂『彗星の孤独』|スタンド・ブックス
    kiku72
    kiku72 2020/04/08
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