永住者が税金や社会保険料を故意に支払わなかった場合に永住許可の取り消しを可能とする今国会で審議中の関連法改正案を巡り、出入国在留管理庁は8日の衆院法務委員会で、サンプル調査の結果、永住者の未納割合が1割だったと初めて明らかにした。「永住者の未納の統計もなく、法改正の根拠がない」とする野党側の批判を踏まえた。 改正案は、外国人技能実習制度を廃止して「育成就労制度」を新設し、人手不足の分野で未熟練の外国人労働者を受け入れる。日本での永住希望の増加が見込まれるため、公的義務を果たさない外国人労働者の永住許可要件の厳格化も盛り込んでいる。 入管庁によると、2023年12月末現在、国内に永住者は約89万人おり、すべての永住者の納付状況は不明とした。ただし、一部の永住許可申請の書類を調べた結果、23年1~6月に審査を終えた1825件のうち、未納は235件(12・8%)あったとした。内訳(重複含む)は、
入管法改正案に反対してプラカードを掲げるなどして行進するデモの参加者たち=東京都渋谷区で2023年5月21日午後6時、後藤由耶撮影 日本の難民認定率は先進国の中でも極めて低く、「難民鎖国」と批判されている。フランスに滞在中の上智大・稲葉奈々子教授(国際社会学、移民研究)は「フランスは日本で言われているような『難民に寛容な国』ではない」としつつ、「政治的状況にかかわらず合理的に難民を受け入れている」と話す。2021年の難民認定率は日本の0・7%に対してフランスは39・2%と大きな差がある。難民を巡るフランスの制度や現状について聞いた。 ――フランスの難民受け入れ状況は。 ◆OFPRA(フランス難民・無国籍者保護局)によると、難民認定数は21年で5万4379人(12年は1万28人)。認定率は39・2%(12年は21・7%)です。ミッテラン政権時代(1981~95年)のような10万人規模での非正
小泉龍司法相は5日の閣議後記者会見で、非正規滞在の外国人に対し、法相の裁量で日本での滞在を認める「在留特別許可(在特)」のガイドラインを改定したと明らかにした。在特を判断する際の考慮事情を明確化した。6月15日までに施行される改正入管法と同時に運用を始める。 2023年6月に成立した改正入管法は、本人による在特の申請制度を創設した。在特を付与するかの判断に当たり、「家族関係」や「素行」といった事情を考慮するとし、出入国在留管理庁は改正入管法に対応したガイドラインの策定を検討していた。 新たなガイドラインでは、家族とともに生活する子どもの利益の保護の必要性と、地域社会との関係構築について積極的に評価すると明示した。例えば、家族全員が非正規滞在であっても、子どもが日本で相当期間教育を受け、親が地域社会に溶け込んでいるような場合は積極的な事情と評価される。 一方で、改正入管法で新設される、国外退
人手不足の産業で外国人労働者を受け入れる在留資格「特定技能」を巡り、政府が2024年度から5年間で最大82万人の受け入れ見込み人数を試算していることが関係者への取材で判明した。19年の制度導入時に設定した5年間の受け入れ見込み人数の2倍以上の想定で、深刻化する人手不足を解消するため、外国人労働者に依存する傾向がさらに強まりそうだ。 特定技能は在留期間が通算5年の「1号」と、熟練した技能が求められ、家族帯同で無期限就労が可能な「2号」がある。政府は23年8月、2号の対象分野を2分野から11分野に拡大。無期限就労が可能な別制度がある「介護」を含め、現行の全12分野で永住に道を開く仕組みを整えた。政府は「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野を追加することも検討している。 政府は19年の特定技能導入時に5年間の受け入れ見込み人数を最大34万5150人と設定した。新型コロナウイルスの水
「数百万人もの命が危険にさらされており、ミャンマーを忘れ去られた危機にしないためにも、私たちみなができるかぎりのことをしなければならない」 昨年12月、国連人道問題調整事務所(OCHA)が発表した報告書は、深刻化するミャンマーの人道状況への危機感をあらわにした。 2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生したミャンマーでは、昨年秋以降、国軍と少数民族・民主派との武力衝突が拡大。紛争地から逃れ、国境地帯に逃れた国内避難民は260万人にのぼるとされている。OCHAは国民の3人に1人にあたる約1860万人に人道支援が必要な状況になると予測。国際社会に支援を呼びかけた。 劣勢に立たされている国軍は2月10日、兵力増強のため18歳以上の国民を対象に徴兵制度を開始することを突如、発表。若者の間では国外に脱出する動きが広がり、混乱に拍車をかけている。
「自由に平和な人生を送る権利があります」。毎日新聞の取材にこたえる南アジア出身の女性=2024年2月14日午後2時2分、和田浩明撮影 「レイシャルプロファイリング」という言葉がある。警察官らによる人種に基づく差別的な職務質問や捜査などを指す。米国では1990年代に問題視する動きが浮上、国連人種差別撤廃委員会は防止ガイドライン策定などを各国に勧告する。日本でも近年、被害を受けたとする外国ルーツの人たちが訴訟を起こすなど、注目を集めつつある。 南アジア出身でイスラム教徒の40代女性もその一人だ。2021年9月、「警察官らに人種差別的扱いを受けた」などとして東京都を相手取り損害賠償を求め東京地裁に提訴した。訴状などによると、21年6月、都内の公園で当時3歳の娘(日本国籍)を遊ばせていたが、「自分の息子が娘に蹴られた」と主張する日本人男性から「ガイジン」と怒鳴られ「生きている価値がない」「差別して
牛肉のサンドイッチなど南米料理を販売する「サボールラティーノ」=愛川町で2024年1月26日午後3時7分、田中綾乃撮影 神奈川県央地域に位置し、人口4万人に満たない愛川町。だが、外国籍住民の割合は約8%と県内市町村の中で最も高い。山間の小さな町に多くの外国人が住むわけは――。町を歩くと、課題も見えてきた。 2023年10月時点で同町の外国籍住民は約3300人。出身国別では、ペルー(697人)、ベトナム(473人)、ブラジル(456人)の順で、4位以降も南米や東南アジアが目立つ。 町は、役場窓口にスペイン語とポルトガル語の通訳職員を置いたり、112言語に対応する翻訳タブレットを導入したりするなど、外国人の相談業務の質の向上を図っている。スペイン語など10言語の母子手帳を交付するほか、病院での診療時に医療通訳を派遣する制度も設けている。
「ヘジャブを着けるな」。農業経営を学びたいと来日したイスラム教徒の女性にかけられたのは、心ない言葉だった。深刻な人手不足を補うため国が創設した特定技能制度だが、今も現場では人権侵害と指摘されるケースが後を絶たない。「もう限界」。女性は恐怖感から逃げるように退職した経緯を明かした。 農業経営を夢見て日本語学び デア・ウィディヤニンシさん(25)は、インドネシアの首都ジャカルタから東へ約200キロ、西ジャワ地方のマジャレンカという農村で生まれ育った。将来はコメ農家を営む父の後を継ぎ、機械化による大規模な農業経営に取り組みたいという夢を抱いた。 高校生の時、インターネットで日本の農業は機械化が進んでいるという記事を読み、日本に憧れた。インドネシアの農業大学を卒業し、日本語も学んだ。 2022年11月、特定技能の在留資格で来日。鹿児島県内で農園を営む会社に就職した。創業者の娘や夫らが中心の親族経営
外国人の技能実習と特定技能の両制度の見直しを検討している政府の有識者会議の4日の会合で、技能実習で外国人の受け入れ仲介や実習先の指導・監督に当たる「監理団体」のチェック機能強化を求める指摘が示されたことが判明した。現行の技能実習では、監理団体と、実習生の受け入れ企業の役員の兼職が可能だが、なれ合いの温床になっているとして兼職を全面的に禁止すべきだとの意見が出たという。 有識者会議は、技能実習を廃止し外国人労働者の確保・育成を目的とする新制度を創設する方向で秋にも最終報告書を取りまとめたい考え。監理団体は新制度でも維持される見通しだが、新制度下で果たす役割についてさらに議論がなされるとみられる。
深刻な労働力不足に苦しむ運送業界が、外国人材に活路を求め始めた。背景には、運転手不足で路線バスの減便が進むなど、私たちの日常生活にも影響が出始めている現状がある。現行制度のもと、国の動きに先んじる形で外国人の雇用に踏み切った企業もあり、ドライバーを「特定技能」の対象とすることに業界の期待は膨らむ。プロドライバーの門戸を外国人にも開く時代に向けた課題は何か。現場の動きを追った。 言葉の壁もスマホで対応 「ゼッタイニ ホースヲ フマナイ」「ツカッタラ タダシイ イチニ モドス」 全国で2番目に多い約3万1000人のブラジル人が暮らす静岡県。磐田市の運送会社「マルシンレッカー運輸」を訪ねると、カタカナの注意書きが壁に張られていた。同社は5年ほど前から日系を中心にブラジル人の雇用を積極的に進め、今はドライバー50人のうち2割近くの9人を占め、荷物の配送をしている。 背景にあるのは深刻な人手不足だ。
開放的な館内。デザイン性の高さも人々を引きつける=金沢市の石川県立図書館で2023年7月13日午後2時5分、深尾昭寛撮影 昨年7月に移転・開館した石川県立図書館(金沢市小立野2)が、開館1年で来館者数100万人を突破した。写真映えする円形劇場のような吹き抜けが特徴的な館内に約30万冊の図書が開架され、来館者数は移転前の約4倍と飛躍的に増加した。【深尾昭寛】 7月8日、県立図書館で100万人達成の記念セレモニーが開かれ、同県小松市の大田裕二さん(52)、妻の友美さん(47)、三女の心音乃(ことの)ちゃん(5)親子が、馳浩知事や田村俊作館長とくす玉を割った。家で育てているカブトムシが成虫になり、飼育の参考にする本を探しに訪れたという心音乃ちゃんは「これからも図書館に来たいです」と笑みを浮かべた。 昨年7月16日に金沢市中心部から移転・開館した県立図書館は地上4階・地下1階建てで、延べ床面積2万
2021年3月、名古屋出入国在留管理局の施設で死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)を巡る国家賠償請求訴訟で、収容中の様子を収めた監視カメラ映像が21日、名古屋地裁で初めて上映された。 この日の証拠調べでは、約3時間分の映像が法廷内の大型モニターに映し出された。約40分間は着替えや嘔吐(おうと)の場面などで、裁判官や遺族、代理人弁護士のみが手元のモニターでイヤホンを使って視聴した。 上映された映像の中には、ベッドに横たわったウィシュマさんが「死ぬ」などと痛みを訴え、病院に連れて行ってほしいと何度も懇願したり、「あー」「うー」とうめき声をあげたりする場面もあった。その場にいた職員は「死なないよ、大丈夫」「(病院に)連れて行ってあげたいけど、私はパワーないから」などと答えるだけだった。
外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議に臨む岸田文雄首相(中央)=首相官邸で2023年6月9日午前8時7分、竹内幹撮影 政府は9日、熟練した技能を有する外国人労働者が取得できる在留資格「特定技能2号」を現在の2分野から11分野へ拡大する案を閣議決定した。2号を取得すれば無期限就労が可能になる上、家族の帯同も認められる。日本が人口減少社会に突入する中、外国人労働者の永住に道を開く大きな転換点となる。 特定技能は人手不足が深刻な特定産業分野で外国人を受け入れるため、2019年4月にスタートした。在留期間が通算5年の「1号」と、在留期間の更新回数に上限がない「2号」がある。1号は相当程度の知識・経験、2号はより熟練した技能が求められる。いずれも同じ分野内であれば職場を自由に選べる「…
賛否が渦巻く入管法改正案が28日、衆院法務委員会で可決された。不法滞在中の外国人の強制送還を進める狙いがあるが、日本で暮らす外国人の「排除」につながりかねないとの懸念も示されている。入管施設で2021年に死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の2人の妹たちは傍聴席から審議を見守り、「(姉の死を)検証しないで法案を通そうとするのは間違いだ」などと訴えた。 傍聴したのは、妹のワヨミさん(30)とポールニマさん(28)。通訳の説明を受けながら真剣な表情で審議を見守った。
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第5回)の冒頭、あいさつする田中明彦座長(左奥から3人目)=東京・霞が関で2023年4月10日午前10時2分、小出洋平撮影 国際貢献を目的に外国人の技能を育成する「技能実習」と国内の人手不足を補うために外国人労働者を受け入れる「特定技能」の両制度について見直しを検討している政府の有識者会議が10日開かれ、技能実習を廃止し、外国人労働者の確保・育成を目的とする新制度を創設するとした中間報告書のたたき台が示された。 有識者会議は月内に中間報告書を取りまとめ、今秋の最終報告を目指す。早ければ来年の通常国会に関連法案が提出される可能性がある。 技能実習は人材育成を通じた国際貢献を目的に掲げるものの、実態は外国人労働者の受け入れ手段となっており、実習生が過酷な労働を強いられたり失踪したりする事例が問題視されてきた。
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