「道久……ッ!」 松木さんの叫び声は、嵐の咆哮の中に呑まれた。 全身から血を吹いて倒れた部下のように、道久さんも「黒い何か」をまともに体に受けて、倒れたのである。まるで銃弾を受けた人のように。 映画やドラマで見る倒れ方ではなく、体中の力が一気に抜けて崩れ落ちるような倒れ方である。 変幻自在の黒いものは狭い境内の中で、更なる生け贄を求め、暴れている。 が、それらは、トーコちゃんの振るう布都御魂剣《ふつみたまのつるぎ》の前に、次々と霧散していったのだ。黒い帯状の塊が粉々に砕ける、といった感じだ。 これはトーコちゃん自身の霊力と、神剣に秘められた力による相乗効果だそうだ。 あんなに小さいのに、俺が両手で抱えていた重い刀を、バターナイフのように軽々と操っているのも、トーコちゃんが特別怪力なわけではなく、ちゃんとからくりがある。 ただ、そのからくりも、手品師のタネのような、人間の盲点をついたものでは