江戸文化研究への多大な功績で文化勲章を受賞した九州大名誉教授の中野三敏(なかの・みつとし)さんが11月27日、急性肺炎のため死去した。84歳。告別式は親族で営んだ。喪主は中央大文学部准教授の長男学而(がくじ)さん。 福岡県出身。高校教諭、短大助教授を経て1972年に九大文学部助教授。母校・早稲田大に提出し刊行した博士論文「戯作(げさく)研究」(中央公論社)がサントリー学芸賞、角川源義(げんよし)賞を受賞。82年に九大教授に就任した。 専攻は日本近世文学。本格的に研究対象とされてこなかった江戸中期こそが、江戸文化の開花期であると主張し、その後の江戸文化観・研究の方向性に大きな影響を与えた。 長年、江戸時代の和本収集に取り組むなど書誌学研究の基盤を築いた。さらに浮世絵師・写楽の正体が阿波藩お抱えの能役者の斎藤十郎兵衛であることを立証するなど、研究領域は幅広く美術史や思想史まで及んだ。 85年に