自然の造形力と作家の創造力が詩的な感覚で融合された作品によって、現在、世界的に最も注目を集めているアーティストの一人、ジュゼッペ・ペノーネ(Giuseppe Penone、1947-)。抽象や具象にかかわらずコンセプチュアルで無機的、そして個人主義的な作品が氾濫する現代の美術界のなかにあって、ペノーネの自然味溢れ、詩情豊かな作品が発する独創性と私たちに与える説得力は、異彩を放っています。 ペノーネは、自然を素材とし、それとの直接的、あるいは間接的な相互作用によって作品を生み出しています。人間を含む自然の事象に目を向けることから導き出される彼の作品は、その中には存在するものの、意識的には認識されていない生命力や造形力を捉え、目に見えるかたちで私たちに提示しているのです。それは鋭い洞察力と豊かな感性に支えられており、また、日本人の心性にも通じる自然観を湛えているとも言えるでしょう。 199