講演: 日本の『死の舞踏』: 『九相詩』と『一休骸骨』Kūsōshi and Ikkyū Gaikotsu by Yūichirō Imanishi 今西祐一郎 (NIJL) 要旨: ヨーロッパ中世を覆った「メメント・モリ」の思潮をもっとも雄弁に表すのは、『死の舞踏』(La Danse Macabre)という絵画で、書物としては15世紀1485年にフランスで出版された。そこには貴賤を問わずすべての人間を死へ誘う骸骨の姿が描かれている。いうまでもなく骸骨は死の象徴である。しかし、人間が死を免れないはかない存在であることは、洋の東西を問わない。日本では仏教の教えに「九相」ということが説かれていた。「九相」とは人間が死後、白骨になるまでの死体の腐敗変貌の過程の九段階のことであり、それはまさに仏教の「メメント・モリ」であった。その九相の図が描かれ、その絵に解説の漢詩と和歌を添えて『九相図』という