今回は、財政再建による景気への影響をめぐる議論をみてみよう。 財政支出の削減や増税は、通常のケインズ流マクロ経済学の考え方では、財政の引き締めによって、民間の消費などに悪影響が及び、国内総生産(GDP)の押し下げ圧力が高まるとされる。不況時に財政支出拡大や減税が景気を刺激すると考えられるのと同じ効果(方向は逆)で、「ケインズ効果」とよばれる。デフレからようやく脱しつつあるいまの段階で、急激な引き締めに懐疑的な声もあるのは、こうした点などを懸念してのことだ。 これに対して、財政赤字が急拡大する、また現在の日本のように政府債務残高の対GDP比率が高い水準にある、といったように財政が不健全な状態では、大胆な財政引き締め策は、むしろ民間の消費などを拡大させ、GDPの落ち込みを防ぐ可能性もあるとの見方がある。イタリアの経済学者ジュヴァッツィ、パガーノ両氏の研究などがそれで、早期の大胆な歳出削減などを