今回は極悪非道な殺人者と一人の看守との友情の物語である。涙なくしては読み進めることが出来ないので、予めハンカチを御用意願いたい。 時は1928年8月、ワシントンDC連邦拘置所での出来事である。4月に赴任したばかりの若い看守、ヘンリー・レッサーには気になる囚人がいた。大柄で、いつも無表情なカール・パンズラムという男である。 或る日、見回りがてらに何気なく訊いてみた。 「あんたの裁判はいつから始まるんだ?」 「11月だ」 その眼には凄みがあった。暗黒街の大物に違いないとレッサーは思った。 「娑婆では何をしていたんだ?」 「人間の更正だよ」 すると同じ房の囚人たちが笑い出した。レッサーには意味が判らなかった。 「人間の更正?」 「そうだ。更正させるためには殺すしかない」 しかし、調べてみると、男の容疑は窃盗だった。歯科医宅に侵入してラジオを盗んだのだ。そのことを問いただすと、 「そうさ。ケチな容