はじめに 太陽系のような惑星系は、この宇宙においてありふれた存在なのでしょうか。近年、私たちの住む太陽系の周りとは大きく異なる環境下に存在する原始星(生まれたばかりの星)の化学組成が明らかになりつつあります。本稿では、日本の赤外線天文衛星「あかり」と地上の大型望遠鏡群の連携により研究の一端が切り拓かれた、低重元素量銀河における星・惑星材料物質の化学的多様性について、最新の研究成果を交えて紹介します。 宇宙の化学進化と星間分子 私たちの身の回りには炭素、窒素、酸素をはじめとした様々な元素が存在します。天文学では、水素・ヘリウム以外のこれらの元素は全て重元素と呼ばれています。重元素は、恒星内部の核融合反応などにより生成され、星の死に伴い星間空間へと放出されていきます。放出された元素は、次の世代の星の材料として使われ、星の誕生と死の繰り返しにより銀河の中では物質が循環していきます。 宇宙誕生の一