かつてのインターネットは非現実だった。 どんどんわからなくなっていく勉強。うまくいかない学校生活、受験、恋。 それらのリアルから目を背けたかった僕のような思春期の子供にとって、インターネットは逃げ道だった。 インターネットの中なら僕は何者にもなれた。 大人にも、女にもなれた。 検索すれば何でも知ってる気になった。 掲示板で、どこの誰だか知らない他人を馬鹿にしたり、僕も馬鹿のフリをしたり、楽しかった。 現実の自分は忘れられた。 僕の居場所がインターネットの中には確かにあった。 それが現実じゃないことはわかっていても、僕にとっては現実よりも価値のあるものだった。 僕の仮想現実。僕の居場所。 その僕の仮想現実が、いつの間にかリアルに食われてた。 インターネットの話題はリアルの誰でもが口にするし、リアルの話題で溢れるようになったインターネット。 インターネットはリアルのために存在するようになった。