1931年9月18日、中国東北部の奉天駅近くで、南満州鉄道(満鉄)の線路が爆破される柳条湖事件が起きた。日本が泥沼の「15年戦争」に突き進むきっかけとなった満州事変。その現場やその後建設された満州国を間近で見続けた日本人がいる。満州国総務庁の元官僚先川祐次さん、101歳。満州事変から90年の今、当時の内実を初めて語る。連載第7回は「希望と失望」。(編集=朝日新聞記者・三浦英之) 名物教授が集まった建国大学 私が第1期生として入学した建国大学の教授陣には、大学の考案者である石原莞爾少将が提案した通り、当時の学界の名物教授たちが思想や信条に関係なく、広く日本国内外から集められていた。 例えば、中国法制史を教えた滝川政次郎教授は後の東京裁判で弁護人を務めた人物だったし、崔南善教授においては、1919年の「3.1独立運動」で独立宣言書を起草するなど、当時の朝鮮を代表する独立運動家の1人だった。 そ