(2010年6月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 人は仕事を失った時、自分の生き方まで見失うことがある。そして、人生において全く新たな進路を取る決断を下す。熾烈な生存競争から降り、生活を切り詰め、外国語を学んだり社交ダンスを始めたりするのだ。 2008年に始まった経済危機は、西側諸国の識者や経済学者の間で、これと似た意義の探求を引き起こしたようだ。だが、彼らが疑っている大前提は、個人的なものではなく政治的なものだ。 筆者は先週、経済協力開発機構(OECD)がパリで開催した「資本主義の未来」という壮大な題のセミナーで司会役を務めた。パネル討論の参加者の目玉は、ジョン・メイナード・ケインズの伝記を書いたロバート・スキデルスキー卿。ケインズが再び流行し始めた2年ほど前から引く手あまたの経済学者である。 スキデルスキー卿は『How Much is Enough : The Economics
私が、この業界に入った20年ほど前、ソフトウエア開発理論で名を知られるジェームズ・マーチン博士(第1回のコラムを参照)が、講演などでいつも口にしていたことがある。 まず、システムと組織には「KAIZEN(改善)」が必要だということ。システムをいったん作ってそれで終わりにするのではなく、「システムに合わせた組織を作る」「組織に合わせたシステムに再構築する」のが必要、ということであった。 何よりも「システムは生き物なので、どんどん成長させなければならない」と言っていた。具体的には、「総売り上げの5%前後を、システム開発に投資し続けるべき」というものであった。ビジネスモデルの変化を絶えずシステムと組織に反映すべき、という考えである。 プロジェクト担当者は「兼務」ではなく「専任」で その一方で、マーチン博士は講演でよく「ある国の経営者は、システム開発にあまりにも過剰な費用を投入している」と指摘して
かつては、革靴に白いソックスを履いて、リュックを背負って、ビニール傘を持った社会人は大半が「システムエンジニア」と相場が決まっていた。 私が社会人になった時の「新入社員研修」では、「靴下の色は靴かズボンの色に合わせる」とか、「ベルトと靴は同じ色に」「ストライプ模様のシャツにストライプ模様のネクタイは合わない」とか、身だしなみの基本を教えられたものだ。 当社の新入社員研修では、上記のことはもちろん、社会人として守らなければならない「就業規則」、各種法律やビジネスマナーなどを徹底して教えている。その「当たり前のことを、当たり前にやる」ことを、当社の「社員3カ条」の1つに挙げている。 当たり前のことを当たり前に行わない「いい加減なシステム屋」 しかし、IT業界では当たり前のことが当たり前に行われていない。黒い革靴に白いソックスを平気で履くような「いい加減なシステム屋」が大手を振って歩いているので
(2010年5月15/16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 欧州大陸が政治と経済の混乱に見舞われた1週間が終わり、英国の政治は以前よりも欧州的に、欧州の政治は以前よりも英国的になったように見える。 英国で発足したタイプの連立政権は、ドイツやイタリア、オランダではごく普通のものに見えるだろうが、2大政党が敵対し、強い単独政権をいただく政治の伝統を持つ英国にとっては極めて異質である。 片や、ユーロ圏の債務危機が生み出した政治・経済の雰囲気はサッチャリズム全盛期の英国を彷彿させる。アテネの街頭で生じた騒乱、スペインで見られる国と公務員との対立、ドイツで大衆迎合主義的なタブロイド紙が主導している欧州連合(EU)懐疑主義的な反発などがその主なところだ。 極めて欧州的なクレッグ副首相が変化の触媒 英国で変化の触媒の役目を果たしているのは、副首相に就任したニック・クレッグ自由民主党(自民党)党首であ
重要なのは、中国のオーナー企業がラオックスから学ぼうとしている点だ。日本在住歴20年の中国人で、ラオックスの新社長に就いた羅怡文氏は、サプライヤーとの関係を改善し、名高い日本のサービス基準を中国に持ち込みたいと語っている。この買収以前のラオックスの株価は1株10円程度まで下がっていた。現在は110円近辺で取引されている。 多くの日本人は、中国人の下で仕事をすることを不安に感じる(ちょうど1980年代に米国人が日本の自動車メーカーで働くことを嫌がったように)。今年3月に高級ゴルフ用品メーカーの本間ゴルフが、中国のマーライオンホールディングスに買収された時、社員は「非常にショックを受けた」と従業員の1人は認める。 しかし、手作業でゴルフクラブを製造し、個々に番号をつけている本間ゴルフは最近、事実上の破綻(民事再生法による経営再建)を経験していた。「だから、我々は仕事があるだけで幸せだ」と、その
2009年の自殺者数は、警察庁のまとめによると3万2753人と、12年連続で3万人を超えた。自殺率は10万人あたり24.4人と、世界で第6位だ。 日本より自殺率が高いのは、ベラルーシ、リトアニア、ロシアなど旧社会主義国ばかりである。これらの国と日本が共通するのは、旧秩序が崩壊したのに新秩序ができていない宙ぶらりんの状態が長期にわたって続いていることだ。 特に日本では、1998年に2万3000人から3万1000人へ一挙に35%も増えた。この年は北海道拓殖銀行、山一証券の破綻に続いて、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行などの破綻があり、これに伴って企業倒産件数も負債総額も90年代で最悪になった。 日本では自殺率は失業率と強い相関があり、98年の激増は金融危機で説明がつくが、景気が回復した2000年代になっても、自殺率は高いままだ。特に目立つのは、図1のように老人の自殺率が下がる一方、雇用が不安
バラク・オバマ米大統領が打ち出した新たな銀行規制改革案は、大統領が明言した「米国の納税者が大きすぎて潰せない銀行の人質に取られることは二度とない」という目標を達成することはないだろう。 しかしオバマ大統領が提案した改革案がその壮大な目標に見合わないものか否かはともかく、1つ、確かなことがある。改革案が実施された場合、意図せぬ結末を招くということだ。それが延々と続いてきた過去の金融改革の歴史なのである。 例えば米国のレギュレーションQを取ってみよう。米国の金融当局が1930年代に銀行の預金金利に上限を設けたレギュレーションQには、銀行の収益を引き上げたい(ひいては、預金保険機構への支払いの助けにしたい)という願望などいくつかの狙いがあり、その背景には、預金利率の過当競争が銀行に過度のリスクテークを促しているという考え方があった。 レギュレーションQは、1960年代に貯蓄貸付組合にも適用された
(2010年2月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 最初はギリシャ、次がポルトガル、その次はどこか? 欧州の通貨同盟プロジェクトは、11年間の歴史の中で最も危険な局面を迎えている。先週、ユーロ加盟国の政府は初めて、仲間の加盟国の救済に向けた準備を始めた。 ギリシャは恐らく、どこかの段階でつなぎ融資が必要になるだろう。もしかしたら、ポルトガルもつなぎ融資が必要になるかもしれない。だが、両国はいずれも小国だ。何が起きようとも、それがユーロを崩壊させることはないだろう。 ユーロ圏を脅かす危険はギリシャやポルトガルではなくスペイン ユーロ圏にとって、今そこにある危機はスペインである。欧州政策研究センター(CEPS)のダニエル・グロス氏は先週、本紙(英フィナンシャル・タイムズ)への寄稿で、スペインはギリシャよりも総貯蓄率が高いために、比較的ましな状況にあると論じた。 だが、筆者の見るところ、スペ
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