何でも世界一でないと気がすまない米国人。その自尊心はほとんどの分野で満たされているようだが、どうしてもダメなものもある。それは、健康に関してだ。多くの米国人は自分たちの平均寿命がギリシャ、スペイン、コスタリカなどより低く、OECD加盟28カ国中、男性で22位、女性で19位だと聞くと驚く。 「なぜ、ある社会が他の社会より健康なのか」。遺伝や生活様式といった個人の形質の違いもあるが、社会そのものの形質の違いがそれを決めるのではないか――というのが本書の主張だ。 たとえば所得との関連。当然のことながら食料や清潔な水に困り、すぐれた医療施設や医療技術へのアクセスが困難な社会は、平均寿命を短くする。しかし、それも国民所得が5000ドルを超えるあたりから変わり、それまであった所得と平均寿命の相関関係は薄れてくる。健康にとって基本的に必要なものは限られているので、それ以上のものは金では買えないという