常軌を逸する精神状態を演じさせれば、そこはニコラス・ケイジの独壇場となる。クレイジーな言動や行動をハイテンションで繰り返すのは、名優ジャック・ニコルソンも得意としたところだ。ニコラス・ケイジは、血走った目をらんらんと輝かせながら、ここにさらに一種の音楽的ともいえるグルーヴ感をもたらし、狂気の新たな表現を新しく開拓したといえる。まさに狂気演技の第一人者といえる存在である。 そんなニコラス・ケイジが、「ここ10年の自分の出演作で最も気に入っている」と発言したのが本作『マッド・ダディ』だ。ここで彼が演じるのは、なんと我が子を殺したいという強い衝動にかられた、文字通り狂った父親である。自分の子どもへの愛情と強い殺意という、相反する感情を同時に表現する役回りだ。 ニコラス・ケイジは、この問題作“マッド・ダディ”をどう演じたのか。そして本作がこのような奇抜な設定を使って表現しようとする、ニコラス・ケイ