美容を気にする一部の人たちの間で「美肌のため柑橘類を食べない」という動きがあると聞いた。2015年に米国で発表された論文を受けての報道や、その論文にも言及されている成分の作用をめぐる医学ジャーナリストのコメントが影響しているようだ。 柑橘類は、長らく私たちが国産品も輸入品も含めて食べてきた果物のひとつ。概して「健康によい」と考えられてきた。「美肌のために柑橘類を食べないほうがよい」というのは、どこまで信憑性ある話なのだろうか。巷で流布されている情報について整理し、体への作用をできるだけ広く捉えるべきと考えた。 そこで、柑橘類の体への作用を多面的に研究してきた専門家に話を聞くことにした。応じてくれたのは、同志社女子大学生活科学部教授の杉浦実氏だ。2018年まで、国の研究機関である農研機構でカンキツ研究領域ユニット長を務め、静岡県内の住民を対象に、ミカン摂取量の違いによる疾病リスクの差異を調べ