人権の私人間効力 甲斐素直 問題 XはY社の入社試験において、「あなたはいずれかの政党に現に所属していますか、あるいは所属していたことがありますか」と質問され、「いいえ、どこの政党にも所属していませんし、所属していたこともありません」と答えた。しかし、実際にはXはA政党にそれまで属して活動していたが、就職氷河期と呼ばれる厳しい雇用情勢の下で、 政治的に偏った主張をすることで知られるA政党に属していたのでは就職が困難と考え、脱退していた。採用後にそのことが判明したため、Xは入社試験において虚偽の 陳述を行い、もって雇用関係の基本である相互の信頼関係を破壊したとして、解雇された。 そこでXは、Yの入社時の質問は、そもそも憲法19条の保障する内心の自由を侵害するものであり、したがって解雇は憲法違反であると主張して、解雇無効の訴えを提起した。これに対し、Yは「憲法19条は、対国家的権利であって、私