しばらく梨木香歩作品を読んでいなかったなと思い彼女の著作を検索していて見つけた本。梨木香歩の翻訳って珍しいな、と手にとってみるととても良い一冊だった。 第二次世界大戦中の1940年、英国ロンドン郊外ケント州ブロムリーで暮らす音楽家の女性キップス夫人宅の玄関先に生まれて間もないイエスズメが倒れていた。瀕死のスズメは数日後に快復し、夫人も「彼が自分の力で飛び、かつ食料を確保できるようになったら、すぐ外に放してやるつもりだった」が、幸か不幸か、スズメの左足と右翼には生まれついての障碍があり、満足に飛ぶことができない。結局夫人はそのスズメを飼うことにし、夫に先立たれた一人暮らしの夫人とスズメとの十二年に渡る共同生活が始まった。 本作は、そのスズメの丁寧な観察記録であり、心温まる人とスズメの交流の物語である。1953年に英国で、続いて米国をはじめ世界各国で出版されベストセラーとなったがこれまで未邦訳