5月末に刊行した拙著『力道山未亡人』(小学館)では、主人公・田中敬子の周辺人物として、複数の著名なプロレスラーが登場する。亡夫である力道山光浩はもちろん、弟子であるアントニオ猪木、アパートのオーナーと住人の間柄にあったジャイアント馬場、亡夫と先妻との間の子である百田義浩と光雄の兄弟、敬子との約束を反古にしながら、窮地に立たされると助力を乞うてきた芳の里淳三、遠藤幸吉ら日本プロレスの幹部……。 そんな中、際立って存在感を発揮するのが、力道山の死後、日本プロレス第2代社長に就任した敬子未亡人から社長の座を譲渡され、第3代社長の椅子に座りながら、ギャンブル狂の放漫経営の末に、日本プロレスから追放された豊登道春である。 活字に起こすと、多くの読者から不興を買うことになるのは、必然かもしれないが、意外なことに田中敬子自身は「酷い目に遭ったとは思うけど、不思議なことに、豊登さんには、そんなに悪い記憶が