“デスマッチのカリスマ”葛西純の武器はパールハーバー・スプラッシュをはじめとする得意技だけでも、蛍光灯やパイプ椅子といった凶器だけでもない。彼は言葉も巧みに操る。そのことで観客の心を掴み、対戦相手と向き合い、プロレス界や世相と闘うのだ。 プロレスというジャンル自体が、スポーツとしてもエンターテインメントとしても特殊な部類。デスマッチはとりわけ偏見を持たれやすい。自分がやっていることはどういうものなのか。観客に何を見せ、何を伝えているのか。深く考える必要がある。だから言葉も研ぎ澄まされる。 「血を流す非日常はリング上だけでいい」 「生きて帰るまでが デスマッチ」 これは昨年公開された葛西のドキュメンタリー映画『狂猿』のキャッチコピー。11月、正岡大介との大流血戦に勝った時にはこう言った。 「俺たちデスマッチファイターはこんだけ血を流して、命張って、でもこれで終わりじゃねえ。これから清掃作業し