猛威を振るった台風15号は、震災の傷痕の残る東北地方も容赦なく襲った。その数日後、私は岩手県一ノ関市を訪れた。 爽やかな秋空、思わず深呼吸したくなるような空気、まるで地震も台風も嘘だったかのようだ。しかし、駅から車で走っていくと崖が崩れている所があるなど、傷痕は生々しい。 ここに来たのは、自衛官を支えている重要な装備品である半長靴(はんちょうか)の製造現場を見るためだ。製造している会社はミドリ安全である。東京都内に本社を構えているが、工場は東北が多い。 田んぼの中にポツンと、その作業場の1つがあった。携帯電話は圏外になっていた。中に入ると、エプロン姿の30人ほどの女性たちが黙々と作業をしている。半長靴製造の最初の工程をここで行っていた。 微妙なカーブを作りながら皮を縫い合わせるけっこうな力作業を、簡単そうにやってのける。全てが丁寧な手作業である。 だが、できるだけ素早く作業をこなさなければ