何年か前のお正月に、実家で過ごしていたとき。居間に皆が集まって、飲んだり食べたり喋ったり。午後の日差しはうららかで、部屋の中はいつにない人の多さで、少しむせかえるような空気。新鮮な空気命の私としては、換気せずにはいられなくなり、「ちょっと寒くなるけど、窓開けて、空気入れ替えるね」と家族たちに声をかけて、居間のサッシも窓も大きく開け放つ。すうーっと外の空気が、部屋の中を通り抜ける。呼吸がふうっと深くなる。乾いて冷たい空気なのに、お日様にちゃんと温められた匂いがする。そうそう、広島の冬の匂いはこんなだった、と思い出しながら、日向にじっと正座して、うつむいて風の動きに身を委ねる。 「ううっ、さむいっ」と真っ先に声を出したのは義弟(妹の夫)だ。「あ、もう、寒くなった? もうちょっと待ってね。部屋のすみっこの空気まで入れ替えてしまうけんね。あとちょっとじゃけん」と言いながら、ソファのところに置いてあ